45 ぬくもり
「アースラーン、いい加減起きないと遅刻するぞ〜」
ビーっと訪問を示すアラームを何度も押しても反応がないアスランに、カガリは多少イライラしていた。
・・・せっかくキラと一緒にMSの整備や基本トレーニングを受ける約束をしたのに。
それを昨日からずっと自分は楽しみにしていたのに。
大体ザフトのエースって呼ばれていた奴が寝坊なんかしていいのかよ!
ぷっと頬を膨らませると、これが最後のチャンスだと言わんばかりに強くボタンを押す。
・・・が、やっぱりアスランの反応はなかった。
「もういい!勝手に入ってやるからな!!」
いつもなら気を使って人が出てくるまで部屋には入ろうとはしなかったけど、今回は違う。
アスランが悪い。アスランが悪いんだ。
自分はそんな悪い奴をただ起こしてやるだけ。
文句があるならアスラン自身に言え!
誰もカガリに文句等言っていないにも関らず、一人ぐるぐる今後の展開を予想していると、いつの間にかもう部屋に入ってきていた。
一瞬びくついたカガリだが、すぐに暗い部屋の中で気持ちよさそうに寝息を立てている者が目に取れた。
そろりそろりと近付いてみると、その顔がだんだんはっきりと見えてくる。
いつもはあんな怖い顔をして怒ってくるのに・・・・。
まるであの顔が嘘のように、今は子供のように安らかな顔をして眠っている。
そしてこんなにも寝顔が綺麗な人は他にいないんじゃないかと・・・そんな気がした。
だがカガリの任務はあくまでアスランを起こすこと。
”叩き起こす”・・・なんてことは極力避けたいが、この際その手段だって選ばないといけないだろう。
なんたってあの”エースのアスラン・ザラ”が寝坊しているのだ。
敵は強敵、味方は自分1人。
カガリ・ユラ・アスハ、出るぞ!
力強く発進すると、カガリは勢いよくアスランを揺さぶり始めた。
「ったく、いい加減起きろ!みんなお前のこと待ってるぞ!!」
が、さすがカガリが認めた強敵だけあって、一向に起きる気配がない。
むしろまた夢の世界へと戻っていってる気さえした。
その姿にさすがにプチンときたカガリは、今度はがばっとアスランに飛び乗る。
さすがにその上で跳ねてでもしたら、こいつだって起きるだろう。
そう思った時だった。
一瞬まだ開ききってない目と視線があったかと思うと、一気に体が布団に押し付けられた。
そして自分を包むアスランの腕。
目に映るのは部屋の天井と、わずかに見えるアスランの髪のみ。
「わ!バカっ、お前何考えてっ・・・!!!!」
一気に体温が上がったのを感じると同時に、体の関節がなくなったように動けなくなる。
暴れようにも、こうも抱きかかえられるとそれさえ出来なかった。
第一こんなとこキラや他のみんなに見られたら、それこそ一生恥ずかしい思いをしないといけなくなるだろう。
何とか動けるようになった腕で、アスランから離れようとすると、まだ寝ぼけているのか夢の中なのか。
アスランが耳元で呟いた。
「母・・・上・・・・二コ・・・ル・・・・・」
「・・・え?」
”ニコル”。
その言葉を聞いて、カガリは腕に力を込めるのをやめた。
そう、アスランの口から何度も出てきたこの”ニコル”という名前。
会ったことはなくても、ニ度と忘れないであろう存在となっていた。
年下で戦うことが嫌いで・・・そんな彼の死によってアスランも苦しみ、皆も悲しんだ。
「自分が変われば良かったのかもしれない・・・」そう涙を流しながら嘆くアスランを見た時もある。
いくら夢の中とはいえ、きっとアスランは亡くなったこの2人と会っているのかもしれない。
どんなに強くたって、どんなに悲しみや苦しみを知った者だって、それを振り切れることは出来ないから。。
だから今向かい合って、また”明日”に繋げようとしているんじゃないかって・・・そう思えてならなかった。
先程自由になった手で今度はカガリがアスランの体にぎゅっと腕を回すと、慰めるように呟いた。
「大丈夫だ、お前には私やキラやみんなが・・・すぐ側にいるから」
「ねぇ、カガリ。アスラン知らない?もうテスト始まっちゃうのになぁ・・・」
「あいつなら多分まだ寝てるんだろ、もう起きると思うけど。」
「えっ、何でそんなことが分かるのさ?」
「勘だよ!かーんっ!ほら、先始めるぞ!」
-----きっともう大丈夫だ、私も、アスランも・・・・
---------こうして人として出会えて、温もりを分かち合える今だからこそ・・・・。
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*管理人コメント*
ちょっとシリアス風味?なのかな?
まぁ結果的にまたザラさん襲いましたが(笑)
でも表には見せない寂しさや影を出したかったんですよー。
やっぱりアスランのそういうとこを全部受け止めて理解出来るのは、カガリだけだと思うので。
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