-----キラは昔と変わらない

-----------甘ったれで、ワガママで、泣き虫で。。でも1度覚悟を決めたら絶対曲げない。

--------------------そんな俺の幼馴染、"キラ"

だけど1つだけ、変わった所・・・・いや、新たな彼の1面を見つけることになるとは、その時の俺はまだ知らなかった。






「アスラーン!!!」



呼ばれた方に向かって視線をずらすと、カガリがアスハ邸の玄関から走ってくるのが見えた。
何がそんなに嬉しいのか、尻尾をパタパタと振る子犬のような顔をしてこちらに向かってくる。
車を降りたアスランが、そんな彼女に手を振ろうとした・・・その時。
一瞬、氷のような冷たい空気がアスランの体を通った。



---------こ、この気配は・・・・・!!




半ば確信を込めて、ぐっと視線を玄関の方にずらすと、その先にはアスランの予想通りの人物が立っていた。
カガリの双子の兄、最強のコーディネーター。
そして・・・・自分の幼馴染であり、親友。
その彼が今、殺気のような気配をアスランに向かって漂わせているのだ。
しかも、その気配はカガリが自分に近付いてくる程、黒みを帯びている。


「遅かったな!アスラン!もう仕事の方はいいのか?」
「・・・・・・・。」
「アスラン?」
「あ、あぁ。もう仕事は片付いたんだ。だから今からカガリを連れてキラやラクスの元へ行こうと思ってたんだが・・・。」


その必要はなかったみたいだな、と、アスランは苦い想いで、言葉を足した。
無論、それ以前に最近キラはカガリの様子を見ると言って、しょっちゅうアスハ邸に足を運ぶ。
カガリがそれに喜ぶのはもちろんだが、アスランとしてはどうも複雑な思いがしてならない。
っと言うのも、最初はただ遊びにきていたのだと思っていたのが、それがアスランに対して監視をしているということに気が付いたからである。
1度そのことを彼の恋人であるラクスに相談しようかと思ったが、彼女のことだ。
逆に、カガリに変なことをしていないかと、遠回しで問質されるだろう。
「おかえり、アスラン」と言うキラの笑みは、やはりどこか冷たく、怖いものがあった。








それから数日後のことだった、カガリのボディーガードの仕事が出たのは。
今まで専任のボディーガードがいなかった方が不思議なくらいだが、どれもカガリがつっぱねていたため、選考が遅れたのである。
今回、一国の代表のボディーガードということで、公募とはいかず、政府の役人が専任した候補の中から選ばれたのだった。
そして、それが・・・・・


「僕と・・・・」
「俺の・・・どちらか?」
「あぁ、そうなんだ。」



そう、選ばれたのはこの2人。
キラとアスランだ。
お互い、カガリとは親密な関係という事で問題視もされたが、個人の能力としては申し分がないということで、候補に挙げられた。
そして最終的には当の守られる人である、カガリが決める・・・ということになったのである。
カガリとしては、正直どちらでもいいと言ったらいい。
本当ならば、自分のために危険な仕事をこの2人のどちらかに追わすことはしたくなかった。
だが、政府直々の通達となったら、余程の理由がないと文句は言えない。
そこで、2人を交えて相談することになったのだ。




「僕は全然構わないよ。カガリの護衛だなんて、むしろ今よりずっと安心出来るしね!色んな意味で」


予想通り、キラはまっさきに立候補を表明した。
と、同時に"じと・・・"と、アスランに向けてあの嫌な視線を痛いほど突きつける。
が、話の主役であるカガリはまったく気付かず、アスランが泣きたくなる程、火に油を注ぐような発言を繰り返していた。



「で、でもな?キラ。普通に考えてお前よりアスランの方が銃や拳の腕は上なんだろう?だったら私は・・・」
「カガリ!確かに今までは銃とか苦手だったけど、今はもう違う!僕は大切な妹を自分で・・・」
「あ、いや、そうかもしれないんだけど、やっぱり危険な仕事だし、キラはあんまりそういうの向いてなさそうだし・・・。」
「・・・・カガリ!」


もはや半泣きのキラ。
そしてカガリがキラに何か言うたびに、アスランにその代償が支払われる。
と、キラが何か思いついたように、友を問質し始めた。




「ねぇ、アスラン。君はどうなの?カガリの護衛の仕事、受けたい?」
「え、あ・・・俺は・・・」
「受けたくないんだよね?アスラン・・?」



そう、アスランが辞退すれば、自動的に仕事は自分に回ってくる。
それを分かった上で、あえて問質したのだ。
大事な妹を、いくら親友と言えどもまだ渡す訳にはいかないという一心で。
少し卑怯な手だとは思うけど、これだけは譲れない。
だが、アスランの答えはキラの期待を見事に裏切ることとなった。




「俺は・・・・護衛の仕事をやりたい、自分で。」
「・・・え?」
「自分の手で、カガリを危険から守りたい。だからカガリの許可が下りるなら、俺は喜んでこの仕事を引き受ける。」
「ア、アスラン!君、何を言ってるか自分で分かってるの?!」
「あぁ・・・、分かってるさ、キラ。」




実はアスランは、キラに問質される前から、その答えは心に決めていた。
穏便な性格から、どう話を切り出そうか悩んだものの、アスランとしてもこればかりは譲れない。
半ば、キラと取っ組み合いになる覚悟もあったぐらいだ。
まさか自分の仕事でこんな結果になるとは思ってなかったカガリも、2人の様子を確認し、口を開く。



「・・・・やっぱり私は、この仕事をアスランにお願いしたい。
 確かに銃の腕前等の能力はアスランが上だけど・・・キラ、お前にはもう戦うとか、傷つけるとか・・・そういうものに係って欲しくないんだ。あの大戦の時1番嫌ってたのはお前だから・・・。アスランもここオーブで生きると言ってくれた、だから私はそんな想いにこんな形だけど答えたい。
 ・・・・・こんな理由じゃ、だめか?」



にこっと、笑うカガリ。
そんな彼女の真っ直ぐな言葉に、もはやキラとアスランはそれぞれ覚悟が出来ていた。




「カガリがそこまで言うなら仕方ないけど・・・・よろしくね、アスラン」
「え?」




ポンっとアスランの肩に手を置くと、キラはその笑顔とは裏腹に、その想いを確かめるように手に込める。
カガリにあそこまで言われちゃ、お兄ちゃんだって頷くしかない。
いや、こうなることは最初から分かってたのかもしれないけど。
カガリのアスランに対する眼差しさえ見れば、そんなのすぐにでも分かる。
けど・・・

----------自分さえ銃や拳の腕前がアスランよりも優れていたならば・・・・・!!



・・・アスランが声にもならない程の力を、キラが自分の指に集中させていたのは、被害者であるアスランと当事者のキラ以外はまったく気付かなかったというのは言うまでも無い。







それでも、カガリに向ける笑顔は常に120%

顔を引きつかせる幼馴染を横目に、今日もキラは可愛い妹の元へ行く。

頑張れ、アスラン!












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*管理人コメント*
黒いキラお兄ちゃん、大好きです(笑)
・・・見ようによっては、すんごいアホ小説・・?(←作者本人は大真面目)
キラ様を書いてて、こんなに楽しいことはありませんでしたv