静かな波。
赤く染まる太陽。

それらはいつもと変わることなく、穏やかな時間の流れの象徴だった。

しかし、僕にとってはまさに特別な日。
全てが始まったこの日は、ある種の戒めの日でもあった。











--また、来年--









出生の事実を知ったあの日以来、僕はどうも"誕生日"が苦手だった。
別に知り合いの人からお祝いの言葉をもらったりすることに抵抗があるんじゃない。
ただ・・・・自分が生まれてきてしまったことに、何かを考えずにはいられなかった。

出来れば目を背けたい。
来年もそのまた来年も見ることなく、ずっと背くことが出来たらどんなに楽だろう。






と、少ししてふいに潮風に乗って甘い花の香りがしてきた。
振り向くと、そこにはアドリアンブルーの瞳をした彼女が一人静かに佇んでいる。

「ラクス・・・・」

「・・・・また何か考えてらしたんですか?」

「うん・・・・」

「・・・・そうですか。」

そう言って微笑むと、ラクスはゆっくり僕の肩にもたれかかかった。
同時に、僕もそんなラクスの肩を抱く。






----------不思議だ。






たった少しの会話・仕草だけで心が落ち着く。
自惚れかもしれないけど、僕達はこれだけで十分な気がした。




「・・・キラ?」

はっと気が付くと、思わず手の力を強めてしまっていたらしい。
慌ててその力を緩めると、今度はアドリアンブルーの瞳が不安げに潤むのがすぐに見えた。

「ごめん・・・つい・・・・」

時々フラッシュバックされるように思い出される人々。。
折り紙をくれた女の子・トール・そしてフレイ・・・・・・。
みんな僕が守り切れなかった、守るべきものを守れなかった僕の結果。
だからせめて・・・せめて今いる大切な人々を守りたい、大切にしたい。


今触れている彼女を、ずっとずっとこの先もこの手で守りたいんだ。



矢が刺さった様な痛みが心を襲うと、無意識の内に肩ではなくラクス自身を抱きしめてる自分がいた。
と、背中に彼女の温かい手が触れていることに気が付く。



「キラ・・・・私は・・・」

「え?」

「私はあなたのお側にずっといられたらと・・・共に生きたいと、そう願ってます。
 人の道はそれぞれ。ですが、共に歩むことも出来るのです。
 私は・・・・・あなたと、キラと共にその道を歩んでいきたい・・・・。」

「ラク・・・ス・・・」




腕の力を緩め、再び彼女の瞳に視線を移すと、その瞳はひどく澄んでいて・・・力強かった。
そのまっすぐな眼差しが、先程の痛みをやんわりと解きほぐしてくれるのが分かる。

----だから、



「・・・・僕もラクスと一緒に探したい。僕達の道を。」




拭い切れない、悲しみ。
償いきれない、多くの罪。
けれど、また来年。ラクス達とこうして生を受けたことを感謝をする日がくる。
それが僕の、僕達の運命なんだから。



--------だからもう、逃げない。

-------------------自分が生まれてきた、この日を。









「キラ、来年もまた言わせて下さいね?私にこの言葉を」

「え?」

「お誕生日、おめでとうございます。キラ。」

「・・・・ありがとう」





初めて飲み込めた、"誕生日おめでとう"という言葉。
そしてラクスに、自分に宛てた"ありがとう"の言葉。










きっとまた来年、僕はキミの隣でその言葉を聞いている。
















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*管理人コメント*
ってな訳で、双子ハピバ小説第二弾!
うって変わってシリアスです。
しかも初めてきちんとしたキララクを書いたんじゃないかな、と。
やっぱりこの2人は一心同体な感じがしますよね〜v
お互いが良い距離を保って続ける姿が、すごく印象的。

キラたん、誕生日おめでとー!!!