進歩


ばきっ・・・どかっ

夕空に威勢のいい音が町内に響く

天道道場の裏庭辺りから聞こえる、その場所に乱馬がせっせと稽古をしていた

と、そこに天道家の三女であり、彼の許婚でもあるあかねが差し入れの麦茶と共にやってきた





「はい、これ差し入れの冷たい麦茶」

「ふーっ・・・・・お、サンキュ」



あかねが麦茶を差し出すと、乱馬はおいしそうに一気に飲み干した



「ぷはーっ、やっぱ運動の後には冷たいものに限るよな」

「で、どう?調子の方は」

「バーカ、誰に聞いてんだよ。この俺が調子悪ぃ訳ねぇだろ?」



けっといいながら、ふんぞり返る乱馬

相変わらずの自信家で偉そうな態度

そんな乱馬を見て、あきれつつもあかねはぷっと噴出してしまった





「な、なんで笑うんだよっ、今のは笑うとこじゃねぇだろ?!」

「だってさ、あんたってほんと昔と変わらないな〜って思って」



道場の入口に腰掛け、顔を手にのせながら再び笑う





「あんた達がここに居候するようになって結構経つけど、何かこう・・・進歩がないっていうか?」

「んだよそれ?!お前もしかして俺のことからかってんのか?」



むっとした顔つきで少し喧嘩腰のまま、あかねの隣りへと座る

火照った体が道場の冷たい床に座ると同時にひんやりとしてきた





「大体なー、お前こそ進歩っつーもんがあったってのかよ」

「な゛、あ、当たり前でしょー?!た、例えばそう、料理だって上手くなったしー・・・・」

「・・・・・・・・・・・・お前それ本気で言ってんのか」



いかにも「それはありえない」と言った表情であかねを見る

今度はあかねがむっとする番だ





「し、失礼ねー!!!
 あ、あんたなんて進歩の例も挙げられてないじゃないっ」



そう言いながら拳を振り上げようとした、その時だった



「・・・・んなことねーよ」



ぱしっとあかねの腕をつかみ、そのままあかねを引っ張って抱き寄せる

あかねの体は乱馬の中にすっぽりと収まってしまっていた



「ちょ、ちょ・・///ら、乱・・・///」

「ちょっと前の俺だったらこんなことぜってぇーしなかったからな♪」

「だ、だからっていきなりこんなこと・・・////」



じたばたもがいても、まるで遊ばれているようで結局はその場から動けない

その上、意地悪いセリフまで飛んでくる



「あ、お前が進歩したってやつの例、もう1つ見つけたぜ?
 こんな状態の時、お前も俺から全然逃げなくなったよな♪」

「そ、それはっ・・・・・・////」



かっと熱くなり、顔はさっきの乱馬以上に火照ってるだろう

そのせいかあかねは顔を俯かせながら一際小さく呟いた





「・・・だって乱馬、逃がしてくれないでしょ?/////」

「大正解。じゃ、これご褒美な」

「ご、ご褒美って・・・・・・・っ!///」



そして更にぎゅ〜っと強くあかねを抱きしめる



「ちょっ・・・・/////」



その時に顔にふわっと触れた乱馬のおさげ髪

それがなんともくすぐったくて、あかねの心を和ませた

しばらくそのままの状態だったが、やがてあかねがゆっくりと口を開く




「・・・・・・初めて会った時、こんな風になるなんて思わなかったでしょ?」

「まぁな。
でもあの頃があったからこそ、今の俺らになってる訳で。
 別にいいんじゃねぇの?」



ちょっと真面目な顔つきで星を見上げるように顔を上に向ける

まるで嘘ではないというように



「・・・・・・・・・・・そうだね。
 でも・・・・あんた、そういうセリフ似合わないわよ」



ちょっと不振がりながら乱馬を見上げるあかね

その瞬間さっきまでの空気が嘘のように壊れた

「かーっ、お前ほんと可愛くねぇな」

おもしろくないっといった感じであかねを見下ろす乱馬

一方あかねはまだ「だってほんとのことでしょ」と顔に書いてあるような顔つきだ



それでも--------------------

言葉とは反対に、その夜、しばらくの間この体勢が変わることはなかった






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*管理人コメント*
「宵のムラサメ」の管理人永野刹那さんに1周年お祝いとして差し上げましたv
・・・甘いんだか甘くないんだか・・・;
仲良いんだか仲良くないんだか・・・;;
でもやっぱり私の欲の塊(笑)
いつまでも素直じゃない2人でいて欲しくても、少しは発展して欲しいなという望みを叶えてくれました(´∀`)
せちゅなさん、1周年本当におめでとうございましたvv