野球応援
「あかね、やろうーよ!!あんたなら絶対すぐ出来るって!!」
「いい思い出にもなるしさ♪」
「人手も足りないし〜・・・・」
「あ、で、でもね・・・」
休み時間、クラスの数名の女子があかねの机を取り囲むようにしてあかねの説得を続けていた。
「私達女子高校生よ?!この若さをここで使わずどこで使うっつーのよ!」
「そうそう!だから一緒にやろうよ!」
「「「チアガール!!!!」」」
季節は春も終わり、もうすぐ夏を迎えようとしていた。
と、同時に始まるのが野球応援である。
夏の地区大会に向けて、この時期から応援団を中心に練習するのだ。
無論、ここ風林館高校も例外ではない。
部自体はないものの、期間限定で毎年創設されるのであった。
「ほ、ほら!私1度乱馬と一緒に今生マリ子との試合で格闘チアガールやったでしょ?それであんまりいい思い出なくてさー・・・」
「・・・そっかぁ。まぁ強制じゃないからねv気が向いたら来てよ♪」
「それにもしかしたら、乱馬君があかねのチアガール姿見たさに泣いて頼んでくるかもよ♪」
「それはそれでおもしろそうねー♪」
「な゛っ・・・・/////」
あかねが顔を真っ赤にしながら否定していると、背後からいきなり乱馬が現れて呆れ顔を見せてきた。
「けっ、んな事ある訳ねーだろ!
大体コイツみてぇな鈍くて、寸胴で、色気もなくて、可愛気のねぇ女にチアガールなんて出来っこねぇって!
だから恥かく前に止めて正・・・・・」
ぐしゃ
鈍い音と共に、あかねのひじが乱馬の顔にめりこむ。
「・・・・ふっ。ここまで言われたからにはやってやろうじゃないのよ。。。。いいわ!私チアガールやる!!」
「ほんと?!あかね!!」
「じゃあ明日の放課後から練習だから、4:15までに昇降口に来てね♪」
「うん、分かったわ!!」
「ちょ、おい、あか・・・・」
キ―ンコーンカーンコーン・・・・
乱馬が言い終わらないうちに始業のチャイムが鳴り、みんな席に着いてしまった。
あかねはというと、乱馬に向けてべーっと舌を出してからふんっと前を向いてしまっている。
「っ・・・・!!」
(・・んだよっ・・・あかねのバカ野朗ーっ)
次の日の放課後
いよいよ練習が始まった。
あかねがチアガールを始めるという情報が、その日のうちに学校中に広まっていたので、ギャラリーの数はいつにも増して多い。
しかしその中に乱馬の姿はなかった。
(なによ乱馬のバカっ・・・応援してくれたっていいじゃないっ)
「あかねーっ?何してるのー?練習始めるわよーっ」
「え?あ、うん!!」
チアの練習は日が沈むまで続いた。
ギャラリーの数も時間と共に少しづついなくなり、練習が終わる頃には数えるくらいしかいない。
そんな様子にホッとするも、あかねは何故か落ち着かない気持ちでいた。
「あかね!バイバーイっ♪」
「うん、また明日ねー!バイバーイっ♪」
友達と別れると、あかねは1人家に向かって歩き始めた。
(はぁ〜・・・疲れたなぁ〜。。)
途中まで来てふっと横のフェンスを見上げても、もちろんいつもいるアイツの姿はない。
いつも必ず言う憎たらしいセリフも、今日はないのだ。
(違う違う!!元はと言えば乱馬のせいでチアをやることになったんだから!!
あいつを見返して!!そう、アイツをっ・・・!!)
あかねは思わずはたっと歩くのを止めてしまった
それから辺りを見回すように、ゆっくりと回る
ほとんど沈みかけた夕日、周りに列なる家々、遠くから流れる川
それらの景色を1つ1つ確かめるように見る
ぐるっと回り終わった時、あかねの顔は笑顔で満ち溢れていた
(・・・・なんだ。。やっぱり、私の周りはもうほとんど乱馬で動かされちゃってるんだ・・・・・♪
今見える景色だって、アイツがいるといないじゃ大分違って見えちゃうなんてね)
あかねが再び歩き始めた時、その足取りは軽く、スキップをしてるようにさえ見えた。
家に帰ると、なびきが玄関の前で顔をにやつかせながらあかねを待っていた。
「ただいまー・・」
「あ、やっと帰ってきたわね?お帰り、あかね♪」
「あ、ただいま・・・。お姉ちゃんなんでそんなに機嫌がいいの?」
さすが妹だけあり、なびきの妙な笑いにすかさず、嫌な予感を感じている。
「ん?別に〜♪あ、それとあかね。乱馬君にお礼言っときなさいよ♪
ま、その理由は聞かないでもあっちが勝手に言ってくれるだろうけどねv」
「?」
それだけ言うとなびきは機嫌良さそうにその場を立ち去ってしまった。
と、同時に、あかねも急いで乱馬の元へ向かう。
がらっ
ふすまを開けると乱馬が機嫌が悪そうな顔をしながらごろんと横に寝転がっていた。
「あの・・・・ただいま・・・」
「あー・・・・・」
返事もこれしか返ってこない。
そんな乱馬の態度に少しムッときたが、あかねは取り合えずなびきの言葉を思いだし、乱馬に礼を言う事にした。
「あのさ・・・あり・・がとね?」
「!!////」
その瞬間乱馬はぱっと顔色を変えて起き上がった。
何を焦っているのか、額には汗が出ている。
「お、おめぇなんでそれをっ・・・・////
あ、なびきの野朗がばらしたんだな?!くっそ〜・・・金払ったのに裏切りやがって〜!!///」
突然の乱馬の行動、発言に何も知らないあかねはただただ呆然とするしかなかった
「べ、別にお前のためなんかじゃないからなっ//そこだけは勘違いすんなよっ///」
「あ、あのさー・・・。い、一体何があったの?」
「へ?」
「なんか乱馬すごく慌ててるみたいだけど、私はたださっきなびきお姉ちゃんに乱馬に礼を言っとけって言われたからとりあえず・・・・」
「・・・・じ、じゃあ・・・おめぇは何も知らねぇのか・・・・・・・?」
「うん・・・何にも・・・・」
あかねが少しばつの悪そうな顔をすると、同時に乱馬は顔面蒼白状態になり、へなへなと力なく座り込んでしまった。
「ら、乱馬・・・?」
「・・・ったくまんまとなびきにはめられちまったぜ!」
「ねぇ何があったの?私にだって訳を聞くぐらいの権利はあるでしょう?」
ずいっと、つっこまれると、観念したように、
「・・・・・・。ぜ、絶対笑うなよ・・・・・////」
と、もごもごとこれまでの経緯を話し始めた。
乱馬の話はこうだ。
あかねのチアを一応見ておこうと思って、行ってみたら九能先輩並、いやそれ以上に怪しい雰囲気を出してる奴がいた。
そこで様子を見ていると、何人かとつるんであかねの写真を撮っている
いつもの事かと思い、さほど気にしていなかったが、後で可愛い子を中心に勝手にその写真を加工してネットで流すタイプのオタクと分かったので、ネガ事奪い取ったとのこと。
が、その一部始終をなびきに運悪く見つかったので、口止め料として金を払ったのだった。
(そっか・・・・だから乱馬はあの時いなくて・・・・なびきお姉ちゃんはあんな事言ったんだ・・・・)
「ま、まぁそういう事だから今度からは安心してチア・・・やってもいいぞ///」
「・・・そうね。でも・・・・もういいの。。私やっぱりチア辞める!」
「は?だ、だってお前・・・・」
「せっかく誘いをOKしたのに悪いけど・・・・・でもそれよりも私の事心配してくれる人がいるからね♪
その人のために早く帰るわ♪」
「ま、まさかそれ・・・お、俺の事じゃねぇだろうな?////」
乱馬が怪訝そうな目であかねを見ると、あかねは意地悪く笑うだけだった。
「お、お前っ///お、俺は別にっ・・・・・」
「あ、そうそう♪お姉ちゃん別に乱馬に嘘ついてないよ?「理由は聞かないでもあっちが勝手に言ってくれる」って言ってたから♪」
「な、なびきの野朗〜っ////・・・・ってそうじゃなくて・・・・!」
「だって、あんた私にチアやって欲しくないんでしょ?だから辞めるの。ね?話、終わり♪」
そう言い残してあかねは乱馬の部屋を出てしまった
(・・・・・あれって・・・俺のため・・・・・ってことなの・・・か?///)
それから数日が経っても、何度この事を聞いてもあかねは答えてはくれなかった
「んだよ!教えてくれたっていいだろー!!」
「そんな事ぐらい自分で考えなさいよっ!!!」
ただ・・・・何故かこの時の喧嘩だけ、2人共終始笑顔のまま
そんな2人を周りのものは不審に思い、事情を知る唯一の者は妖しく笑う
だが、その様子に気付いてないのは当の2人だけだった
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*管理人コメント*
「葵高等学校」の管理人日向葵さんに30000hitのお祝いをプレゼントしました♪
たぶん分かる人には分かると思うんですけど、自分がチアやってるから書きたくなりました(笑)
でもね、本当にいるんですよ。
写真撮る人(--;)
もちろん学校ではいませんが、試合会場となるといかにもおかしそう〜な人が・・ね;
もし今チアをやってる方がいたら、そういう人には十分気をつけて下さいっ(>□<)
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