桜印





春の日差しが温かく差し込むこんだこの日。
偶然か、はたまた他の家族による策略か、あかねと乱馬は2人でお留守番となっていた。
だが所詮この2人。
お互い特に意識することもなく、ただ過ぎる時間をそれぞれ過ごしていた。




そしてそれからしばらくした時、あかねが自分の部屋から居間に向かうと、縁側で1人気持ち良さそうに眠っている奴を発見した。


「・・・ったく・・・こんなとこで寝ちゃってしょうがないなー・・・・・・・」


くすっと笑いながら眠っている許婚の鼻をちょんこんと突いても、当の本人は起きるどころか反応すら見せない。


「もうっほんとよく寝るんだからっ・・・・まぁしょうがないっかぁ・・・こんなに気持ちいいんだもんねぇ・・・・・・」


そう言うと、あかね自身も乱馬の横にぱたっと倒れ込むようにして、横になった。


「あったか〜い・・・・・・」



ふっと目を閉じると広がる春らしい暖かい光景。
そういえば乱馬が来たのもこれぐらいの時だったんだよね・・・・・・。 そんなことを考えつつ、あの春の日をあかねは思い出していた。
毎朝飽きもせず自分に求愛してくる男達を1人で戦い抜いていたこと。
失恋と分かっていながらも、自分の気持ちを振り切れなかったあの頃、

ちょうどそんな時乱馬は現れた。

最初は自分より強い女の子なんだって思ってたら、実は男の子で・・・・。
しかも男としての初対面が風呂場だったという最悪の結果になってしまった。
・・・けど、そんな中でも今まで過ごしてくるうちに、だんだんと自分の気持ちが変わってくるのがはっきりと分かっていた。
乱馬という存在の大切さ、そして認めたくないけど、こんなにも自分が素直じゃなくてヤキモチ妬きということ。
この気持ちは乱馬と出会えたからこそ、分かった気持ちなんだろーな・・・・あかねは素直にそう思える気がした。
そしてふっと目を開けると、すぐ側にいる許婚にこう呟いた。


「・・・・・・・・・私と出会ってくれてありがとう、乱馬」


そう言うとあかねはちゅっと乱馬の額にキスをした。


「ふふっ、ほんとに何しても起きないのね♪」


照れるように笑うあかね。
その顔はまるで、桜色そのもののように、ピンク色に染まっていた。







「ん・・・・・・・・・」


気がつくといつのまにか自分が寝入ってしまっていた。

「やべっ、いくらなんでも寝過ぎちまった!・・・・・・・って、ん?!」


はっと横を見ると、自分の隣ですやすやと眠る許婚がいる。
・・・確か寝る前はいなかったよ・・・な?
一生懸命眠る前の記憶をたどる乱馬だが、どうもはっきりとしない。


「・・・ま、いっか。・・・・・・それにしてもあかねもよくこんな眠てられるよな〜・・・・って俺も人のこと言えねぇか」


自分で言って自分に突っ込む乱馬だが、その顔はとても和やかだ。


「にしても今日は昼寝日和だぜ・・・・・・・」


--------そういやぁ、俺がここん家来たのもこれぐらいの時だっけか・・・

呪泉卿に落ちてから2週間。
雨が降れば自分は女に、親父はパンダになりながら旅を続けていた。
そんなある日、いきなり伝えられた「許婚」という存在。
しかもそいつは顔は別として、可愛くもないし素直でもない。
最初に会った時は気さくでいい子なのかなぐらいは思ったけど、男だと分かったとたん手のひら返してきやがった奴。

・・・でも、それでも今まで過ごしてくる内に、自分でも知らない内にあかねから目が離れなくなっていることに気がついた。
やっぱりお互い素直になれなくて、意地っ張りな関係になってしまうけど、はっきり言えるのは・・・・・・誰にも渡したくない。
こんな気持ちすら、初めてだった。
あかねがいたからこそ、出会えたこんな自分。
今ではそれが無性に嬉しくてしょうがなかった。


「・・・・今・・・寝てるよな?//////」


そういうと乱馬はあかねの額にちゅっとキスをした。


「・・・・ったく・・・・ここまでしても起きないなんて・・・・・///////」


憎まれ口を叩きつつも、ちょっと嬉しそうな顔の乱馬。
再び襲ってきた眠気と戦いながらも、そのまぶたは静かに閉じていった。







「ただいまー・・・・って、誰もいないのかしら?」


夕方になって、まず1番初めに帰ってきたのはなびきだった。
今日の留守番を2人に任せたのも彼女であるが、あまりの静けさに少々戸惑う。

「おかしいわねー・・・確か乱馬君とあかねが・・・って、これはまた・・・・・」

が、廊下に差し掛かった時、寄りそうように寝ている2人を発見した。
そして、ここぞとばかりにシャッターを切ると、2人の横にその写真をそっと置く。

「1組+ネガ=5000円」というメモを残して・・・・・







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*管理人コメント*
「僕だけの女神」の管理人よっし〜さんに相互記念として差し上げたものですv
春・・・ということで桜を使ってみましたが・・・思わぬ桜の花びらとなってしまいました(笑)
にしても天道家の縁側は本当に昼寝に気持ち良さそうですよねー///
私も1度あそこで寝てみたいもんです♪
・・・あ、ちなみにこの小説であかねちゃんが「そういえば乱馬が来たのもこれぐらいの時だったんだよね・・・・・・」と言っていましたが、
漫画の時は確か夏ぐらいに乱馬が来たとなってるんですけど、アニメでは春の桜が散っているぐらいに登場したんですね^^;
なので、今回はアニメ設定でやらせてもらいました。