ガソリン





「ったく・・・高校生にもなって職場体験とは情けねぇぜ」
「まぁ授業も今日1日ないし、いいんじゃない?」
「それもそうだけどよー・・・・場所がなぁー・・・・」
「仕方ないじゃない、どうせ私達は格闘家で未来も決まってるし・・・・
 就職なんて関係ないんだから自動的にみんなの余り物をやるのがオチよ」
「だな」


そう言うと2人は同時にため息を漏らした。






今日は職場体験の日。
皆、一応は就職などを真剣に考えているため、それぞれ希望の職に近い場所を体験する。
だがあかねと乱馬にとっては関係のない話に等しい。
先生もそれは承知していたので、結局余りものの「ガソリンスタンド」で研修を受けることになったのだ
メンバーは乱馬、あかねを含む合計4人。
1日体験となる。


「ま、気楽に頑張りましょ♪どうせ1日だけだし」
「あぁー・・めんどくせぇ!!」

乱馬の叫びもむなしく、一行は体験場所となるガソリンスタンドに着いた。







その後、店長らしき人物から仕事や心構えなどについての説明を受け、すぐ現場で実際に働くことになった。



「ふふっなんか楽しみね♪」
「そ、そうか・・?」
「こらこら、一応仕事なんだから私語は慎むようにね!」
「「は、はい・・・・・・」」



ガソリンスタンドと言えども広い所は広い。
その分だけ持ち場の数は多くなってしまう。
案の定、乱馬とあかねはまったく別々の場所を持ち場にされた。



----------------・・・あかねの奴とろいからな・・・・・ぼーっとしてると・・・・


乱馬の心配をよそに、さっそくあかねが持ち場につくと客の男があかねに絡んできた。

「ねぇ君可愛いねぇー♪いくつ?どこ住んでんの?あ、今日からバイト入った新人さんとか?」
「えっと・・・あのっ・・・・・」


ナンパなどには慣れているとはいえ、さすがに仕事中でのこういう場面ではどうしたらいいか分からないあかね。
この人も大事なお客様、しかし素直に答える訳にもいかない・・・・・。
その姿に見兼ねた乱馬は男の元へ何か言いに行こうとしたが、
店長からの厳しい目線と他に来ていた2人に止められ、やむを得なく手を出さなかった。
もちろん納得出来るはずがないが、2人の内の1人に


「お前許婚だからって、そんなにあかねの事が心配なのか?」


と、からかわれ、逆に意地を張ってしまったため、しまったと思いながらも手を出せずにいた。
一方あかねはというと、なんとか切りぬけたものの、また新たな男が来ると言う感じでキリがないという状況。



(んもうなんなのよ、さっきから!・・・・乱馬はどう思っているのかな・・・・この状況を見て・・・・)



(・・・ったくだからガソリンスタンドなんかでやりたくなかったんだよ・・・・・・・あかねのバカが・・・。
・・・・って俺はあかねの事なんか心配してねぇぞっ//////)



自分で自分の気持ちに気づいてながらも尚、否定しようとする乱馬。
結局そうこうするうちに1日体験は終わってしまった。







「・・・・ふーっ。なんか1日やっただけなのに1週間休みナシで働いた気分だわ。
・・・・・ちょっと乱馬、聞いてんの?」


帰り道、2人は疲れているせいかいつもより遅いペースで歩いていた。
特に乱馬はそれに加えて口数も少ない



「ねぇ、乱馬ってばぁ!」
「・・・え?・・・あ、悪ぃ、何だっけ?」
「もう!!!全然聞いてなかったのね!!」



そう言うとあかねはほっぺたをぷ〜っと膨らました。
思わず吹きだしそうになる乱馬。
しかし彼には元気が出せないもう1つの理由があった。



(・・・・ったく。
 ・・・・いくら仕事とはいえ、しつこくつきまとう野郎(おとこ)を追い払えなかったなんてな・・・・・情けなさ過ぎるぜ・・・・)


と、あかねが突然まっすぐ前を見て言った。



「ねぇ、私が色んな人にからまれた時どう思った?」
「え・・?」
「あんた、ヤキモチ焼いたんでしょ?♪」
「な゛っ・・・・//////」
「ほ〜ら、その顔は図星ね?・・・・まったく・・・そんなの焼いてる暇があったら仕事すれば良かったのに」
「だ、誰のせいだと思ってるんでぃ!///」
「やっぱり、心配・・・してくれたんだ・・・・」
「ち、違っ・・・・/////」
「ふふっ♪そんなに心配しなくても大丈夫よ!私の・・・私の帰りたい場所はここだから」



あかねはニコっと笑うと、さらに満面の笑みを浮かべながら言った。
そしてまるで化学反応のように同時に比例して顔が赤くなってしまう乱馬。


(な、なんでーあかねの野郎・・・/////今日はやけに素直じゃねぇか・・・・/////)


その途端、さっきまで疲れきっていた体が幾分元気を取り戻したように感じた。



「早く帰ろ♪お腹空いちゃったもん!」



(・・・・・俺にとってのエネルギー・・・・つまりガソリンは・・・・コイツ・・・・なのかもしれねぇ・・・・・な//////)



「・・・・ね!また聞いてなかったでしょ?!」
「う、うっせーなぁ!/////ちょっと考え事してただけだろ?!」
「ふ〜ん・・・あんたが考え事ねぇ〜・・・・・」
「なんだよ」
「別っに〜・・・・」
「ほんと可愛くねぇなっおめぇはっ」




そしてさらに続く2人の喧嘩を見つめるかのように静かに月が昇り始めた。






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*管理人コメント*
「Benzina」管理人大野由佳さんに10000HITとして贈呈させてもらった品です♪
ちなみに「Benzina」ってガソリンって意味だそうですよ♪
そういえば職場体験って皆さんやりませんでした?^^
私は・・・私は出来なかったんですよ〜!!(T□T)
なんか1、2つ上の先輩方の態度が悪かったらしくてどの店も受けつけてくれなかったんです。。。
中学校入学前すごく楽しみにしていたので、かなりショックだったのを覚えています^^;
でも次の年からは教育委員会が総合学習の一環として強制的にやらないといけなくなっちゃって・・・・
結局出来なかったのは私の代だけなんです( ̄□ ̄)
なのでほとんどこの作品、想像で作りました(汗)