「あ、くもってるくもってる♪」



あかねは自分の部屋に戻ると外のほうを見ながら1人つぶやいた。
しかし「くもっている」と言っても今日は晴れ。
決して温かくはないけれど雲1つない晴天だ。


「ふふっこれに字書くの好きなんだよねーvvv」


そう、あかねが見ていたのは「空」ではなく「窓」。
冬になると外の気温と中の温度の差によってよく窓がくもってしまう。
あかねはそのくもったガラスを利用して字を書くのが好きでしょうがなかった。


「今日は何書こっかな♪えーっと・・・」


思い出す言葉は「バカ」、「変態」、「男女(おとこおんな)」、「不器用」、「寸胴」、「凶暴」。
そして最後に「可愛くねぇ」。
まさに乱馬とケンカする時に出てくるお互いの決まり文句しかない。


「な、なんであんなやつの言葉なんかっ・・・しかもこんなのばっかり」


ふんっ、と鼻を鳴らすと背後にさらに追い撃ちをかけるように言葉が返ってきた。


「あかね、おめぇさっきから何1人でブツブツ言ってんだ?気持ち悪ぃ」



乱馬だ。
あかねに何度「ノックして」と言われてもなかなかしない、この男。
殴られようと蹴られようと吹っ飛ばされようと、あかねのそのマヌケな姿(乱馬談)を見れることに比べればどうってことないらしい。


「あ、あんたまたノックもしないでっ・・・・」


あかねの頭にプツプツと怒りの文字が現れる


「おっやるか?」

反射的に構えの体制をとる乱馬。
だがあかねはしゅるしゅるしゅる・・・・と、怒りの闘気を沈めてしまった。



「ふっ・・・せっかくきれいにした部屋をあんたなんかとのケンカで汚すのもなんだしね、用がなかったらさっさと出てって」
「なんかとは何だよっ!!なんかとはっ」
「あら、じゃあ「あんたみたいなドジでマヌケで粗忽者なんか」と言いましょうか?」
「あまり意味は変わってねぇーじゃねぇかっっ・・・ったく・・・・ほんと可愛くねぇなっおめぇーはっ」
「可愛くねぇー・・・・・・・」


あかねは乱馬の言葉と同時にぴくっと反応した。
するとそのまま何も言わず窓に向かって歩み始めたのである。


「お、おい・・・」


予想外のあかねの反応に戸惑った乱馬は少し不安になりあかねを呼びとめた。
が、それでも返事がない。




-------ははは・・アイツまさか窓から飛び降りる・・・なんてことはしねぇよな?


「あ、あかね・・・お、おめぇ・・・まさかそんなバカな・・ことを考え・・・」


と、乱馬があかねに話し掛けたその時


「可愛くなくて・・・・・可愛くなくて・・・・可愛くなくて!!!!!悪かったわねぇ〜!!!!」


あかねは乱馬の言葉を無視し、窓をがらっと開けた




「うわっバカ、おめぇこんなことで早まるんじゃねぇっ」
「へ?」







必死になってあかねに抱きつく乱馬。
死んでも離すもんかという気迫を帯びている。
だが逆にあかねの方はと言うと顔を赤くし、かなり困惑していた。



「あの・・・・・何か勘違いして・・・ない・・・?乱馬・・・///」
「え゛・・?」
「私は別に飛び降りるつもりなんてもちろんなかったし・・・////ただこれをやりたかっただけなのよ・・・///」


あかねはその体勢のままで窓に大きく「乱馬のバカ!」と書いた。
どうやら「可愛くねぇ」の言葉でさっき考えていたことを思い出し、ついでだからお返しにと考えたのがこれだった。


「で、でも窓開けたのは・・・」
「あ、あれは窓の隙間にカーテンが挟まってたからっ/////ほら、そういうの・・・何か気になるし・・・・////」


乱馬は少しあかねの顔をみながらぽかーんと口を開けていたが、


「はぁ〜・・・ったくよー・・・女ってこれだからよく分かんねぇぜ」


・・・っと憎まれ口をたたいた。


「なによっ大体あんたが余計な事を言うからいけないんでしょっ」
「んだよ、元々はおめぇが1人で何か言ってんのが悪ぃんじゃねーかっ」
「な゛っ・・・・まぁいいわ♪
 言っとくけどね乱馬、くもった窓に書いた文字ってなかなか消えないのよ♪
 つまり来年の大掃除に窓ガラスを拭くまで「乱馬のバカ!」って文字は残るわけ。
 私がやりたかったのはこういう訳なのよ♪」
「お、おめぇほんと性格悪ぃなっ/////」
「お返しよっ!お・か・え・し♪・・・ってそれより乱馬、いつまで抱いてるの・・?////」
「へ・・?」



はっと気づくと乱馬はあかねを止めようとした時以来、ずっとそのままの体勢になっていた。
そう、後ろからあかねを抱きしめている状態に。




ばっっ


すぐさまあかねから離れる乱馬。
この冬1番と言ってもいいくらい顔が赤くなっている。


「勘違いすんなよっ////お、俺は今そのっ・・・・き、気づかなかったんだからなっっ/////
 ちょ、ちょっと夢中になってて・・・・////」
「夢中・・・って・・・?」


きょとんとしつつ、まっすぐ乱馬の目を見るあかね。
乱馬もそんなあかねの目が離せない。


「心配・・・してくれたから・・・?」
「そ・・・それ・・は・・・//////」



今の状況から逃れたくても逃れない、いや逃れたくないのかもしれない。
この答えは分からなかったが乱馬は1歩も動けなくなってしまった。




「お、俺は・・・・っ /////」



ばんっっ


「あっっっっっかねちゃ〜ん!!!」


そんな中、突然ドアから2人の中に人とは思えないほどの小さい人間が入ってきた。



「お、おじいさん?!」
「げっ八宝斎のじじい!・・・てめぇ何しにきたっ」
「ふんっワシはただあかねちゃんにひざ枕して欲しいだけじゃい!
 ・・・・それより乱馬、お前こそなぜあかねちゃんの部屋にいるんじゃ!!・・・さてはあかねちゃんを襲う気じゃったな?!」
「な゛、何言ってやがる!俺はそんなんで来た訳じゃねぇっ/////
 だ、第一あかねみてぇな色気のねぇ女なんかにだ・・・・・・・」


乱馬ははっと気づき途中で言葉をつまらした。
みるみるあかねの顔が変わってゆく。


「だったら2人共・・・・・・出て行けー!!!!!!!!!」


どがっっ


乱馬と八宝斎は2人同時に吹っ飛ばされた。
その威力はドアを突き破るほどである。



「ふんっ・・・ったく2人共可愛げのない・・・」



------でも・・・窓ガラス、割れなくて良かった・・・。
----------------せっかくの文字だもんね、アレ。・・・・あ!そうだ!


あかねはその問題の窓に向かうと少し言葉を付け足した。






    乱馬のバカ!      でも・・・素直になれるように・・・・する・・・ね







「ま、こんなもんか!・・・・来年まで・・・消えないといいんだけど・・・vvv」



その後あかねが部屋から出ると文字が消された。
その犯人は乱馬でもなく、八宝斎でもなく、もちろんあかねでもなく・・・・・露。
さらに外と中との気温の差が広がり、水滴1つ1つが大きくなってしまったのだ。
その水滴が文字の上を流れることによって消えてしまったのである。

・・・・・だが「バカ」と「素直」の文字は決して消えることなく、いつまでもいつまでも残っていた











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10000hit記念に「Voyage」管理人つゆさんに差し上げたものです♪
久々にもろ日常ちっくなものを書いてみましたvvv
・・・前回の事故でチューしちゃったのはある意味非日常ですしね・・・//////(笑)
やっぱりオチは誰かに邪魔をされるって形になっちゃんたんですけど^^
・・・差し上げるものなのにこんなんでいいのかしら?!(汗)
何はともあれ♪10000hitおめでとうございました〜vvv