守ってやる



・・・ったく
何やってんだよ、俺は
< ふゥ、とため息をつきながら、顔を上げる
こんな良い天気だってーのに・・・・いい気がしねぇ
けど、今はただただ上を向くことしか出来ねぇんだ
だってよ・・・・下向いちまったら・・・・・





「いらっしゃいませー、おみくじ、お守り、絵馬等はいかがですか〜?」





なんて巫女さん姿のあかねがいるんだぜ?
しかも客に愛想良くしやがって
もちろん客っつーのは、野郎ばっか
どうせあかね目当てだろうが、当の本人はそれに気付きもしねぇ
友達の家の手伝いなんて言って買って出た仕事だけど・・・・・・にしてはサービス良過ぎじゃねぇか?
俺はというと・・・・散歩がてら寄った神社の上の屋根に登ったまま
べ、別にあかねなんかをわざわざ見に来た訳じゃねぇ・・・・・・/////
俺にだって暇な日ぐらいあるんでぃ!///
誰にふてくされてる訳じゃねぇけど、何だかこっ恥ずかしい
かと言ってこの場を離れる訳にもいかねぇし・・・・
結局俺はごろんとその場に寝っころがることにした









「あかねの野郎・・・まだ終わんねぇのかな」





そろそろ飽きてきたため、ひょいっと屋根の影から顔を覗かせてみる
ほんとは出ていきてぇとこだけど、あいつに変な誤解されたら元もこもねぇかんな
ばれない様にそうっと・・・・・・・・
・・・・って俺ストーカーみてぇじゃねぇかっ///
いやいや、これは保護者というか・・・監視役というかだな・・・・・
そ、そう。家族として身内の安全を守る使命が・・・・・・



自分でも何を口走ってるのか分からなくなっちまったその時
俺の目にある野郎の姿が映った
・・・そいつは金髪でいかにも"チャラチャラ"したような奴
けっ、神社なんて場所には死んでも似合わねぇ野郎が何でこんなとこにいんだよ
おまけに迷うことなく向かった先は・・・・・もちろんあかねがいる売店
・・・・んのバカ!気付けってんだよ!







"ばっ"





一瞬、頭が真っ白になった気がした
けど、どこへ向かってるぐらいは自分でも分かってる
屋根を飛び降りて、その後は・・・・・・





「・・・・・おい、んなとこで何してんだよ」
「・・・・え?」



がしっとそいつの腕を掴むと、思いっきり握ってやった
ほんとは10の内10の力を出しても良かったんだけど、さすがにそれをやったらこいつの腕の保障は出来ねぇ
ある程度加減はしつつも、ひねり潰す勢いで握る





「い、痛てててて!」
「・・・・ったく。んな痛い思いすんだったら最初っから・・・・・」







"ばしっ"





「っ痛て!」





突然
俺の頭にも何か衝撃のようなものがきた

・・・・というより、かなり痛い
はっと顔を上げると、あかねがはぁはぁ息を切らしながらすごい顔をして、俺の方を睨んでいた
・・・って待てよ
何で俺がおめぇにそんな顔されねぇといけねぇんだ?
むしろ感謝して欲しいぐらいなんだぜ?
と、俺がむっとしてると、もう一発ばしっと頭に平手打ちをくらってしまった





「バカっ!あんたここで一体何してんのよ!」
「ばっ・・・?!・・・んだよ、せっかく人が助けてやったっつーのに・・・」
「はぁ?!・・・あのねぇ、あんたが掴んでる腕の人はここの家の人よ!」
「・・・へ?」





そう言われ、改めてこいつの顔を覗くと・・・・・・・確かにあかねの友達に似ている
ってことは、もしかして・・・・・




「あかねの友達の・・・・・・兄貴?!」
「・・・・初めまして。えっと・・・・・あかねちゃんの許婚の乱馬君?」





さっきの顔とはうって変わって、東風先生ばりの笑顔でこちらにお辞儀をしてきた
俺も慌てて、手を離しお辞儀をする






「この人はね、乱馬。ここの神社の跡取になる人なの!心配していつも様子を見にきてくれるんだけど・・・・・・
 まったく何やってんだか・・・・」
「まぁまぁ、あかねちゃん。ほら、神社の息子とは言っても俺、今の格好は全然かけ離れてるし。
 だからあかねちゃんを狙ってる不届き者だと思ったんだろう?」
「そ、そんなんじゃ・・・・・・・////」
「まぁ、ともかくだ。俺の怪我も大したことなかったし、大目に見てやってよあかねちゃん。」





でも・・・と、あかねは何か言いたげだったが、それを遮るように再び笑顔で相槌を打つあかねの友達の兄貴
俺はというと・・・・・恥ずかしいなんて気持ちは当に越えて、むしろこの場から逃げ出したいぐらいだった
かっこ悪いにも程があるぜ、まったく・・・・・・
いっちょまえに「こいつを守る」なんて思っちまったけど・・・・・全部裏目に出やがる
けっ、さっさと帰・・・・・





「帰ろう?乱馬」
「え?」
「だから帰ろう・・・・家に」





もう仕事終わったからさ、と付け加えると、あかねはぐいっと俺の腕を引いて歩き始めた
もちろん周りにはあかねに群がってた野郎共もいたし、あかねの友達もいた
ポカーンと口を開けたまんまのそいつらと、笑顔で手を振る問題の兄貴を残し、俺らは神社を後にした











「・・・・・・・・・まさかあんなとこでやきもち妬くとは思わなかったわ」
「な゛っ・・・・・・」







帰り道
ちょっと沈黙が続いてたらと思ったら、急にあかねが口を開いた
しかも、はぁ〜・・・と呆れたようにため息をつくと同時に、じろっと俺の方を睨んできやがる
か、可愛くねぇ〜!!!!!!
確かに・・・その・・・・・さっきの俺はかっこ悪かったかもしんねぇーし、情けなかったけど・・・・
でもそれは誰のためでもない、おめぇのためにやろうとしたことなんだぞ?
それをヤキモチだの何だの言った挙句に、その態度かよ
まったく、これじゃ今日の俺、ほんとにバカみてぇーじゃん・・・・・







「でもさ・・・・・・・何かびっくりしちゃったよ
 人前で私のためにあんなに怒ってくれるんだなーって」
「え?」







へへっとくすぐったそうに笑うと、コイツはまた世の男の誰もがとろけそうな笑顔をこっちに向けてきやがった
だーっ///////
だからやめろってそういうの!!/////
ったく・・・・フォローしてくれてんのかしてねぇのか分かったもんじゃねぇ!!/////
でも・・・・・お陰でさっきまでの嫌な気持ちが全部吹っ飛んじまった
なんかこう・・・・・これからもお前の事守ってもいいのかなって・・・・そう思えたんだよ
ま、そんなことコイツに言っても、「冗談言わないでよ」とか何とか言って、全然理解してくれねぇんだろーけどな
思わずぷっと、笑うと、今度は不思議そうな顔をしたあかねが、俺の顔を覗き込む







「・・・・な、なんだよ」
「・・・・・・やっといつもの乱馬に戻ったね」
「へ?」
「ったく・・・・・やきもちは程ほどにしないと、嫌われるわよ」







そう言うや否や、俺の鼻先を指でツンと突付くと、今度はスキップをしながら先へ行ってしまった
俺はというと、追いかける気力も無くしちまって、あかねの姿を目で追いながら、ゆっくりと歩き出す
あの笑顔とあいつ自身を守ってやるって・・・・・・そう心に決めながら






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*管理人コメント*
「Nocturnal Bloom」管理人若原麻子さんに、相互記念と4周年のお祝いに差し上げました。
何か久々ですねー;こういうストーリー制になってる作品って。
最近は"思い"や"気持の変化"にまつわる作品ばかりでしたから。
にしても、何だか恥ずかしい作品//////
理由は分かりませんが、ともかく恥ずかしいです(●>□<●)