ひな祭り



3月

そろそろ寒さが抜けて、蜂なんかも飛んでくるのではないかと思えるこの頃

梅の花の香りが漂う中、あかねは1人歌を交じえながら何かの作業をしていた



「明かりを点けましょ、ぼんぼりに〜♪」



次々と箱から出される人形達

そう、雛人形だ

早雲の部屋で着々と用意されるそれらは、まるで天道家に新しい季節を運んでくるようだった





「何やってんだ?おめぇ」





するとひょいっと襖の横から顔を出した乱馬が、物珍しそうにこちらを見てきた





「見て分かんないの?雛人形よ、雛人形」

「・・・ほぉ、これが雛人形つーもんなのか」

「えっ、あんた今まで雛人形見たことなかったの?」

「・・・・わ、悪ぃかよ//」





そう言うと、ちょっと照れくさそうに顔をかきながら、気まずそうに顔を俯むけてしまった

そんな乱馬を見てあかねもはっとする





-------そうか

乱馬、小さい頃からおじ様と修行の旅に出てたから、こういうものあまり見る機会なかったんだ

少しばつの悪い気持ちになりながら、困惑するあかね

すると





「な、なぁ・・・俺もそれやってみてもいいか?」





と、おずおずと乱馬が訪ねてきた

あかねはすぐさま明るい声で返事をし、手順を乱馬に説明する

しかし天道家にあるのは7段の雛壇

そう簡単に事が進むはずもない





「・・・だから!右大臣がこっちで、左大臣がこっちだってば!」

「はぁ?!どっちのじじぃも変わんねぇじゃねぇか!ここでいいんだろ?ここで」

「バカっ、そこはお内裏様の場所よ!一番目立つとこにそれ置いてどうすんの!」

「んなこと言ったって分かんねーもんは分かんねーんだからしょうがねぇだろー?!第一おめぇだってその姫様みてぇな奴・・・・」





あかねがはっと気が付くと、怒りのあまり、持っていたお雛様を強く握りすぎたらしく、髪や服が少し乱れてしまっていた

治そうにも不器用なあかねの手先では、ますます酷くなってしまうばかりだ

そんな様子を見た乱馬も溜まらず





「・・・・・・おい、おめぇそれ以上触んない方がいいんじゃねぇか?」





と、言葉を漏らす





「そ、そんなの分かってるわよ!でも・・・でも治さないとお雛様が・・・・・・・」





しょぼんと、この日一番の落ち込んだ表情を見せるあかね

すると丁度その時、がらっと勢いよく襖が開いた





「はーっ、はっは・・・・そう落ち込むな!あかね!乱馬君!」

「ここは1つわしと天道君が一肌脱ごうじゃないか!!なぁ、天道君!」





がっしり肩を組んだ玄馬と早雲が、2人の目の前に現れたのである



「お、お父さん・・・・・おじ様・・・・」

「親父達・・・一体何考えて・・・・・・」

「まぁ、そう驚くではない!我々2人がひそかに作っていた「もの」が、今ここにその存在を示す時が来たんじゃ!」

「そう!名付けて・・・・・・・・・・乱馬・あかね1/20等身大人形ー!!」





ばんっと早雲の懐から出された2つの人形

それは確かに2人そっくりに仕上がっているものだった

突然の出来事に目を白黒させる2人

何か言おうにも上手く言葉が出ない程だった





「さぁ、これを早く雛壇の上に置くんだ!乱馬君!」

「ちょ、ちょっと待ってくれよおじさん!///なんでこんなもんを雛壇に飾らないといけねぇんだっ///」

「そ、そうよ!///大体こんなもの、いつ作ったっていうの?!////」





顔を真っ赤にしながら2人が猛然と抗議をし始めると、今度は早雲・玄馬ペアがしょんぼりし始める番となった

「ふっ・・・あかね。。お父さん達はね・・・これを作るために3日夜鍋したんだよ?」

「飯もろくに食わずにひたすらこの人形を・・・・その苦しみがどれほどだったか分かるか!乱馬ー!!」

おぅっと顔を腕でおさえる早雲・玄馬

が、当の乱馬とあかねはいささか冷たい視線を送っていた





「・・・・親父・・・おめぇに飯をろくに食わなかったー・・・なんてことあったか?」

「お父さん・・・・夜鍋って言っても最近はよく眠れてしょうがないって・・・この前笑って言ってたわよね?」





ぎくぎくっ

嫌な汗が2人の背中をつたい始める

と、何かを思いついたのか、早雲が少々呼吸を荒くしながらこう呟いた





「・・・・・・・・・・・・君たち。重要なことを忘れてはいないかね?」

「「は?」」

「その人形をそんなにしたのは誰だと言っているんだ。ん?乱馬君、あかね」





ぎくぎくぎくーっ

今度は乱馬とあかねの方に嫌な汗がつたい始めた

「お、俺は関係ねぇぞ!こんなんにしたのはコイツの方なんだからな!」

「あっ、ちょっとずるいわよ乱馬!1人だけこの場から逃げ様ったって許さないんだから!」

「本当のことだろっ、大体おめぇはいつもなぁ・・・・」

「何よ!あんただってねぇ・・・・・・」





ここぞと始まったお決まりの喧嘩

一旦始まったのなら、しばらくは終わらないだろう

すると早雲・玄馬はそろそろと雛壇に例の人形を置いて、2人に気付かれないように部屋を後にした







「大成功だね、天道君」

「私達の作戦勝ち・・・ということかな、早乙女君」

「こんなめでたい日には・・・・・」

「一杯やりますか!これ!」





くいっとビールを飲む仕草をすると、つられて玄馬もつまみを食べる仕草をした

どっと笑いが起こる居間

そして、そんな親のことなどつい知らず、乱馬・あかねの喧嘩はまだまだ続く

その2人の後ろには---------------------

------------------------一風変わった雛壇がいつまでも2人を見守ってた




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*管理人コメント*
ひな祭りだったということで、当日慌てて作りました(汗)
相変わらず余裕のない生活送ってます(ーー;)
おそらく前回小説を作ってから2ヶ月近く経ってしまったので、今回久々の小説に苦労しました。
が、やっぱり楽しかったですv
余談ですが、「ひな祭り」と「雛祭り」だったら「ひな祭り」の方が好き(笑)
・・・・うわぁ;ほんとに余談だなぁ;;