真の強者



「・・・・・・っ」





あかねが針から指を離すと、人差し指からぷっつりと血が出てきた

あかねはその指をため息混じりに口に含む





「んなに怪我するんだったら裁縫なんて辞めりゃあいいのに」



と、横で筋トレをしていた乱馬が口を挟んだ

その顔はやれやれといった感じで、少しげんなりしているようにも見える





「べ、別にいいでしょ!私が何をしようとあんたには関係ないんだからっ」



> きっと睨みつけると、あかねは救急箱からばんそうこを取り出して貼り、再び裁縫を再開した

そんなあかねに言い返すことはしなかったものの、ブツブツと文句を言いながら乱馬も筋トレを始める







「なに?あんたらまた喧嘩してんの?」



そんな時、今度はなびきがポテチを食べながら居間へと入ってきた



「そ、そんなことないわよ!」

あかねがすかさず答える



「そうそう、ただコイツが人がせっかく忠告してやってんのに聞く耳持たなかったって話だよ」

「な゛。その言い方まるで私が悪いみたいじゃないっ」

「ほんとのこと言ったまでだろー」

「なによっ、大体あんたが・・・・・・」



お互い、お互いの作業を止めて取ってかかろうとした時、呆れたなびきがようやくストップをかけた



「はいはい、やめやめ!ったく・・・・・・・・。
 ん?そういえばあかね、その指どうしたの?」



そう言いながらあかねのばんそうこが貼られてる指をびっと指す

一方あかねの方はさっと恥ずかしそうにその指を隠した

すると





「こいつ、不器用のくせに裁縫なんて慣れねぇことすっから自分で怪我してやんの」



再び横から声が飛んでくる

同時にあかねの表情が「後で見てらっしゃい」と言わんばかりに変わった







「ふーん・・・なるほどねぇ」




このいつもの展開をいつものように見ていたなびき

片手に持つポテチを食べながらゆっくりと口を開いた





「ねぇ乱馬君。
 1つ教えとくけど、あかねはあんた達が家に来るまで裁縫なんてほとんどやらなかったのよ。
 この意味、分かるわね?」

「え・・・・・・」

「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!!!////」



あかねの顔が今日一番に赤くなった

乱馬は視線をあかねの方にやったら良いのか、どうかでかなり困惑しているらしい

そんな2人をよそに、なびきの話はまだ続く





「じゃあ今度はあかね、あんたによ。
 乱馬君があんたに必要に言ってくるのは、心配でしょうがないってことよ。
 別に嫌味で言ってるんじゃなくて、ただ素直に言えないってだけ。
 まぁこれは、お互いに言えることね
 ともかく、許婚同士、そこんとこ分かってやんなさい」

「「・・・・・・・・。」」





すっかり黙り込んでしまった2人

どちらも不思議そうに目を丸くしながらなびきをただただ見ている

一方なびきはきっぱり言い捨てると、やれやれと首を振りながら居間を後にした





「なびきってたまにあんなに真面目なこと言うのな。」

「う、うん。昔から・・・お姉ちゃんそういうとこあったかも。
 でもやっぱりいきなりだから、毎回驚かされちゃうんだけど・・・・・」





しばらく2人はなびきが出て行ったその場所を見つめていたが、

やがてはっと気付くと、さっきの事を思い出してか互いに顔を赤くして下に俯かせた









「ふふっ、まったく可愛いったらありゃしない♪
 今日のネタ、さっそく明日にでも売り込ませてもらうわよv」

そんなセリフを聞く術もないまま、2人は次の日を迎えたのだった



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*管理人コメント*
「Benzina」管理人大野由佳さんに1周年のお祝い小説をプレゼントしました
私の大好きななびき姐さん。
そして由佳さんも大好きとのことだったので今回は久々になびき姐さんをメインに仕立てました♪
マンガでもありましたが、なびき姐さんのたまに(たまに?:笑)見せる優しさが私の大好物となっていますv
由佳さん、1周年おめでとうございました(^^)