メリクリ






町がクリスマスのイルミネーションで着飾っている今日。
空は雲行きが怪しくなり、まるで何かを予言させるように不気味に薄暗く雲が町を覆う。

「・・・・・・んだよ、あかねの奴・・・」


そんな中ぶつくさと文句を言いながら1人、公園を歩く乱馬。
その格好はとても痛々しく、服がところどころ破けているのが更に彼を惨めな思いにさせる。
原因は言うまでもなく、恒例の3人娘の戦い。
我先にと家に押しかけ、そのまま乱馬を外に引っ張り出し、ついに取っ組み合いが始まった。
当然その様子を、あかねはいつも通り冷ややかな視線を送りながら、助けることもなく、ただ乱馬を睨む。
が、今日に限ってはその諦め様がえらく早かった。
それもそのはず、実は家族に頼まれるという形でも2人でクリスマスの買出しを約束していたのだ。



「・・・・・・・・やっぱり、私1人で十分だわ。じゃあね」
「ちょ、お、おいあかね・・・・」
「あかね!やっと乱馬諦める決心ついたのだな!」
「そうそう、諦めが肝心やで、あかねちゃん♪」
「少しは見直しましたわよ、天道あかね。おーっほっほっほ・・・・」
「そんな奴、あんた達にいくらでもやるわよ、ふんっ」

そう言う残すと、あかねは1人スタスタと出掛けてしまった。
乱馬はというと、この3人から逃れることも出来ず、更に戦いに巻き込まれてしまうだけだった。
そして、今に至るのである。



「あかねのバカ野郎が・・・・・。あんなんはいつものことじゃねぇか・・・」



止まることのない、あかねへの愚痴。
しかしふと、気づくとあの3人娘へのいくら考えても愚痴は出てこなかった。
今更だから?諦めたから?
・・・・・・・いや、違う。
本当は振り切れずに、アイツの手を引っ張ってやれなかった俺自身にむかついてんだ。


「・・・・・・・・バカ・・・・野朗」


まるで心の線が切れてしまったように、全速力で商店街へと向かった。
途中降ってきた雪も切るように。
人込みを掻き分けて掻き分けて、そしてまた掻き分けて。
どんなに息が上がっても、乱馬の体は止まることを知らなかった。
と、その時


「あんた、こんなとこで何やってんの?」


はっと気が付くと、買い物を終えたあかねがそこに立っていた。


「てっきりシャンプー達と過ごしてると思ったのに」


つんと、すますとぷいっと横を向いてしまう。


「ばっか野郎ー!誰のためにこんな汗流して走ってきたと思ってんだ!」
「え?」
「ったく・・・・・・どっかのヤキモチ焼きのバカのために、俺がどんだけ走ったのかって聞いてんだよ!」


まだ落ち着かない呼吸を何とか落ち着かせながら、周りに人がいるのも気にしないで怒鳴る。



「雪・・・・・・・・・・・・降ってきたね」
「へ?」


またコイツは何を言い出しているのだろうか・・・・。
そう思った時だった。



「・・・・ありがとう、乱馬」
「・・・・え・・・」
「寒かったでしょ?こんな中走るの」


ちょぴり上目遣いで、あのフェンスでの笑顔の時と同じ様に、にこっと笑うあかね。
もちろん乱馬もあの時と同様なかなか返す言葉が見つからない。
そう、ただ"可愛い"の言葉しか出てこないのだ。



「・・・・・・・・・・・買い物、まだ終わってないんだけど。」
「え?あ、あぁ・・・・まだ買うのか?」
「頼まれたものは買ったわ。けど、ま、まだ私の買い物が終わってないのっ/////」



私の買い物・・・・・・
いくら鈍い乱馬でも、その言葉の意味と意図はかるく取れた。


「しょ、しょうがねぇな!付き合ってやるか!/////」
「なーによ!その言い方!大体あんた約束すっぽかしたのよ?その分の元はきっちり払ってよね!」
「けっ、何で俺がそんなことしねぇと・・・・・・」



再びギャーギャー騒ぎながら街中を歩く2人。
ただ、雪だって神様だって意地悪じゃない。
2人が手を繋いで帰るのは、そう遠くないことであった。







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*管理人コメント*
2004年クリスマス限定フリー小説です。
(現在はお持ち帰り期間終了です。)
驚いたことに、この小説を書き終えたのはわずか20分(笑)
多分私にとっては過去最速ですね^^;
でも久しぶりに3人娘を登場させることが出来て、私自身楽しかったです♪
この小説の挿絵ともなるイラストはコチラ