静かな夜



鈴虫が鳴いている。

ココは天道道場。

あかねはコンクリートブロックを砕いていた。

「はー!!」

コンクリの砕ける音と共に、乱馬の声が聞こえる。

「お。まだやってんのか?」

「乱馬。」

道場へ乱馬が入ってきたので、あかねは汗をふきながらその場に座る。

「何?」

あかねが聞く。

「え?」

乱馬も聞き返す。

「何の用事かって聞いてるの。」

もう一度、今度は強く言ってみる。

「用事ないと来ちゃいけねーってのかよ。」

少しムスっとした様子であかねのほうに向き直る。

「別にそういうワケじゃないけど・・・」

ぱっと視線を床に向ける。

乱馬も正面を向く。



しばらくの沈黙・・・



実は、このとき乱馬はある決意をしていたのだった。

今日の昼間のこと・・・・・・



「おーっす。」

「あいやぁ、ニーハオ!乱馬!」

珊璞はいつものように元気に挨拶をしてきた。

コロンに呼ばれてきた乱馬は、取りあえず珊璞の用意してくれた席についた。

やがてコロンが店へと顔を出した。



「婿殿。よく来たのう。」

ニコっと笑顔でそう言うと、トンと軽くい椅子に腰掛けた。

「ばぁさん。話って何だよ?」

乱馬が珊璞の持ってきた烏龍茶を口に含んでから問う。

乱馬にお茶を出したあと、自分も席に着く珊璞。

コロンが口を開こうとしたとき。

「おい。まさか珊璞と結婚しろってんじゃぁ、ないだろうな?」

念オシに一言。

それはモチロンなのだが・・・という面持ちで、話を始めた。

「実はな、先日呪泉郷のガイドから1本の電話があったんじゃ。」

真剣な瞳で乱馬をまっすぐ見ながら言う。

「呪泉郷ガイドから?!」

驚いた様子で続きを聞く。

思わず身を乗り出す。

「今、特別キャンペーンで無料で呪泉郷へいけるんだそうじゃ。」

それを聞いて一瞬止まる乱馬。

「あいやー!!それは大歓喜ね!!」

珊璞も思わず大声が出た。

「ふ・・・ふふ・・・ふふふふ・・・!!」

ふと笑い声を漏らす。

瞳はゆれていた。

「それでじゃ。婿殿を招待したいんだそうじゃ。」

その言葉に大きく反応した。

「ホントかばーさん!!」

喜びのあまり、つい踊ってしまう。



それで招待券を貰ってきたのだ。



しかも・・・



どーゆーワケだか、二枚。



親父と行けってばーさんは言ってたけど・・・・



あんなヤツと行くのはもうゴメンだぜ・・・!!



「中国・・・」

「え?何?」

どうやら声がそのまま漏れていたらしい。

「えっ、いや、何でもねーよ。」

乱馬がヘタな作り笑いでごまかすと、

「行きたいの・・・?」

あかねが見つめてくる。

「え・・・」

「行きたいの?中国。」

もう一度ゆっくりと聞く。



今だ・・・!!



今、券を渡せば二人で中国に・・・



「お?乱馬にあかねくんじゃないか。」

珍しく人間の姿の玄馬がやってきた。

「げっお、親父・・・」

心底やばいという感じで、さっと券を隠そうとするがそうはいかなかった。

あかねが不思議そうに見つめてる中、ひょいと、券は玄馬の手に奪われた。

「何じゃ?これは。乱馬、お前一体何を・・・!!なな、コレは!!」



終わった・・・



乱馬の頭に、その言葉が何度もいったり来たりする。



親父の手に渡ったらもう、終わりだ・・・!!



さっさとあかねに渡しておけばよかったなぁ・・・



などと思っていると、

「乱馬。」

「・・・なんだよクソ親父。」

「あかねくん。」

「何?おじさま。」

すると玄馬は二人の方を抱いてこう言った。

「二人で行きなさい。”温泉旅行”。」



は・・・?



何言ってんだ?親父のやつ。



それは中国行きの旅行券のはず・・・



「あああ!!!」

乱馬がイキナリ大声で叫んだ。

券を見ると、”熱海3泊4日の旅”と、書いてあった。

「何だコレはー!!」

もう一度叫ぶ。

玄馬はニコニコして、

「あかねくん。コイツは照れててなかなか君を誘えなかったんだよ。このこの♪」

などと乱馬をひやかしながら、あかねに言う。

「えっ?!」

驚きのあまり、声が出る。

「ほ、ホントなの?乱馬・・・」

内心ちょっと期待しながら、聞いた。

しかし、返事がない。

絶望のあまり、硬直していた。

「ねぇ、ちょっと。乱馬?あたしを誘ってくれるつもりだったの?」



ばばぁに、だまされた。



考えてみればそんなうまい話なんてねぇよな。



おれのバカ・・・!!



せっかくあかねと二人で呪泉郷行って変態体質直そうと思ってたの に・・・


ん?



券は二枚ある。



ってことは・・・




イキナリ乱馬の顔が明るくなた。

「ね?ちょっとー?」

そう言うあかねの方をぽんとたたきながら、

「行こうぜ!!」

と、爽やかに言う。

どうやら呪泉郷へ行くよりも、あかねと二人でどこかへ行きたかったらしい。

その事実がわかった乱馬は、もはや単純そのもので、素直になりきっていた。

「えっ?!」

あかねは赤くなりながら、嬉しい気持ちでいっぱいであった。



「うん。行こっ!」



出発は明日。

それまで二人は良い夢を見るでしょう。


静かな夜の中で・・・・・・・・・






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*管理人コメント*
「葵中学校」の管理人葵さんに相互記念として頂いたものです♪
乱馬君・・・かわいいですねーvv
っていうかいつもより素直なとこが良すぎです////
意地っ張りなあかねちゃんも魅力的ですが素直に受けとめるあかねちゃんも最高です////
この後の旅行・・・どうなったんでしょうか??(照)
あ・・・!!鼻血がっっ/////(笑)
素敵な小説ありがとうございますvv