天使の贈り物



「でーきたっ♪」

天道家、中庭。

そこは一面の銀世界・・・
雪化粧ではなく、もうすっかり雪に全部埋もれてしまった世界。
その中で、寒さ対策を万全にしたショートカットの少女の後ろ姿が、なにやら微笑んでいる。

「何やってんだよ、この寒いのに。」
茶の間から、中庭を見るようにしておさげの少年が出てきた。

あかねと乱馬だ。

「ほらっ、ねぇ、見て見てっ!!」
まるで雪の使いのような輝かしい笑顔で茶の間のほうに振り返る。
ただ、その手に持った物体を除いては。

「何だ、それ・・・?」
いぶかしげにその物体を指さしながら、乱馬はあかねと物体とを交互に見やる。
乱馬のその表情にまったく気付いてない様子で、物体を高くかざしながら、あかねは言った。
「乱馬にそっくりでしょ?」
物体をかざした空からは、舞い落ちる雪の結晶がだんだんと少なくなり、太陽が雲の隙間から光を放つ。
キラキラとその光を反射する物体。
その空間はとても澄み切っていたが、乱馬はとても不愉快そうにしている。
「その溶けたアイスの、どこがおれなんだよ。」
その瞬間、眩しいくらいの光を背にしていた天使が、恐ろしい悪魔の形相へと化した。
「なんですってぇ〜?!」
つい、力んでしまったので、手にある物体は音をたてて崩れていった。
そして、地面の雪と一体化した。
「あ・・・」
同時に漏れるあかねの脱力した声。
こぼれ落ちた雪の合間から、毛糸でできたおさげだけがカタチとして残っていた。
切なそうにそのおさげを拾うあかねの姿を見て、乱馬はいつもの態度を反省した。
「わ、悪かったな・・・」
こういう場面では、不器用なのはお互い様である。
一緒になって中庭へ身を乗り出し、足をだす乱馬。
その足は素足だった。
「ちょっと、靴もはかないで・・・」
心配げに、雪に呑まれた足を見下ろす。
「おれの分身が溶けちゃったんだから、責任とらねーとな。」
そう言って素足の少年は微笑んだ。
「乱馬・・・」

もうすでに日は高い。

溶けてしまったと思った乱馬のカタチをした雪だるまは、

太陽のもとへと、還っていった。

1つ1つの結晶に、2人の笑顔を映し出しながら・・・







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*管理人コメント*
葵さんから我が家の10000HIT記念に頂いた小説ですvvv
うわぁ〜・・・/////
どちらも可愛いですよ♪
なんだかんだと言って優しいですよね♪乱馬君はvvv
あかねちゃんも無邪気なところがすごく可愛くて・・・/////
私にとってすごく素敵なクリスマスプレゼントでしたっ////
(本日12/24)
こんなに素晴らしい小説、本当にありがとうございましたv