夏色
帰り道、俺とあかねはいつものように並んで歩く。
いつものようにって、俺はフェンスの上、あかねはその下って事だけどな。
ただいつもと違うこと、それは2人に会話がねぇこと…
「ねぇ 乱馬ぁ…」
あかねがおれを見上げて口を開く。
「なんでこんなに暑いのよぉ…」
あかねはいかにも「暑い」って顔をして俺を見た。
「んなこと俺が知るかっ!!」
暑いって言ったらよけい暑く感じてくるじゃねーかっ ったく…
「だって…」
あかねはつまらなさそうな顔をしてタオルで汗をぬぐった。
「‥夏だからだろっ」
俺はボソっと呟いた。
その声はあかねの耳にも届いたのか、
「でもまだ7月になったところよ…」
力ないあかねの声が聞こえた。
それからまた2人の会話は途切れ、俺たちはとぼとぼと家に帰った。
「ただいまぁ…」
俺は玄関を入ると即行で靴を脱ぎ捨て、居間の扇風機の前に陣取った。
「あ゛〜生き返る…」
ふと横を見るとこのクソ暑い縁側で、パンダ(親父)とおじさんが将棋を打っている。
「ずるいぞっっ!早乙女くんっ!!」
とかなんとかおじさんが叫んでるから、きっとまた親父がセコイことでもしたんだろうな…
俺が顔を扇風機に向けなおし風をあびていると
「はい」
あかねが来て俺にアイスを差し出した。
「お・サンキュー」
「うん」
あかねは俺に笑いかけるとトントンと階段を駆けのぼっていった。
かわいいじゃねぇか////
夜、暑さはほとんど下がらず、俺はさっさと寝ようと布団をひいた。
み゛ーんみ゛んみ゛んみ゛ん
セミの声がやかましかったが俺はかまわず横になった。
み゛ーんみ゛んみ゛んみ゛んみ゛ん
み゛ーんみ゛んみ゛んみ゛んみ゛んみ゛んみ゛ん
「ウルっせえなぁっ」
俺は暑くてダルイ身体を起こして、セミの声のするベランダへ行った。
ベランダの戸をガラっと開けると
「乱馬」
ばっちりあかねと目が合った。
「なっ何してんだよっ」
「セミがうるさいから近くにいるのかなぁって…」
み゛ーんみ゛ーんみ゛んみ゛んみ゛ん
あかねが庭の木を指さした。
2・3匹のセミがはりついてる。
きもちワリーなー;
「乱馬はどうしたの?」
「俺もセミが…」
み゛ーんみ゛んみ゛んみ゛っ
セミが急に鳴きやんだ。
「…………」
「…………」
「なんかあたしたち」
「バカみてーだな」
俺たちはそのままケラケラと笑った。
「さて と」
しばらく笑ったあと、俺はよっと伸びをした。
「寝るか」
俺はあかねに背をむけ歩き出す。
「おやすみ、乱馬」
「ぉぅ」
あかねの声を背中に聞いて、俺は部屋へと戻った。
次の日も、相変わらず暑くて死にそうな猛暑が続いた。
帰り道
「なぁあかね…」
俺はフェンスの上からあかねをよんだ。
「何?」
「なんか食って帰らねーか?」
普段はめったに言えない事が、何故かスラッと言えた。
あかねは一瞬驚いたような顔をしたが
「うんっ」
とまた笑顔で俺を見た。
俺はフェンスからあかねの隣に飛び降りた。
「でも乱馬のおごりだからね」
「なんでだよっ。ワリカンに決まってんだろ」
「えーっ……
俺は暑い夏の帰り道なんか嫌いだったけど、
あかねの笑顔が見れるなら、夏の帰り道も悪くねぇかな…
とか想う最近だった。
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*管理人コメント*
いつも遊びに来て下さっているコメットさんから40000hit記念に戴きましたv
「夏色」・・・いいですねぇーv
夏だからこそ見える風景、感じる心♪
そんな要素がすべて詰まった小説とも言えます☆
もちろん乱Xあ度も高め↑↑
自然な2人の中のこういう一コマってすごくいいですよね^^
本当にありがとうございましたvv
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