君の名前を呼んだ後に
「ちぇっ…」
おれは昼前の屋上で一人呟いた。
空は快晴。雲一つないような青空が頭の上には広がっている。
気温もぽかぽかとあたたかく、たまに通り抜けてゆく風が心地いい。
遠くの方で体育をしてるであろう生徒の声だけがこだましている。
4時間目の屋上。
授業をサボるには絶好のシチュエーションなのに
なのに…何か物足りない。
こんなに空が青いと、あかねだったらなんていうかな、とか
こんなにぽかぽかあたたかいと、あかねだったら笑ってくれるかな、とか
今は空席になった、おれのとなりに目をやる。
い、言っとくけどな、別に今日はケンカしたわけじゃねーぞっっ/////
あいつは今頃この下で真面目に授業受けてるだけでぃ。
「はーーー」
おれはそのままごろんと横になり、どこまでもただただ青い空を見つめていた。
「ねぇ、ちょっと。‥んまってば」
次に目が覚めたのは、不意に誰かの声がきこえたからだった。
ききなれた、でもいつきいても心地良い、どこかちょっとなつかしい声。
「乱馬ってば!!!」
おれがまどろんだ意識の中ぼーっとしていると、今度は大きく体を揺すられた。
「あれ…?あかね?」
徐々に開いていく視界に、ここにはいるはずはなかった声の主の姿が飛びこんでくる。
「えっ?!」
「え・じゃないわよ。何寝ぼけてんのよ」
あかねはあきれたようにふっと息をついた。
「何ってオメー授業は…?」
「とっくに終わったわよ」
あかねはまたあきれた顔をする。
「え゛」
おれはあわてて立ち上がり、校庭の時計を見る。
確かに短い針はとっくに12の文字をこえていた。
「やべぇ。いつのまにか眠りこんでた」
ようやく自分のおかれている状況を把握し、おれは思いっきり伸びをした。
さっきよりちょっとだけ高い位置の太陽がまぶしい。
「乱馬いつまでたっても戻ってこないから、ここかなーって」
あかねはそう言って、おれの弁当を差し出した。
わざわざ持ってきてくれたのかよ。
「…サンキュー」
おれは受け取ると即行で弁当箱のフタを開け、おかずを口に放りこんだ。
「ちょっと、もっとゆっくり食べなさいよ。体に悪いわよ」
そんなことを言いながらも、あかねは笑顔だった。
それはこの青空のせいだろうか。
「でもホントにここ、あったかいね」
弁当を食べ終えたおれを、あかねは下からのぞきこむ。
ったく…そんなかわいい顔で人を見るんじゃねぇよ、バカやろう/////
「乱馬でなくても眠くなるのわかるな…」
「だろ。だからついおれも眠っちまって…」
はっとおれはさっきの物足りなさがとっくに消えていることに気付く。
おれのとなりの空席には、今はちゃんとあかねがいる。
「もう春ねぇ…今週はずっとこんなお天気だって言ってたっけ」
確かに天気予報でそんなことを言ってたような気がする。
「じゃあ日曜にどっか行くか」
「えっ?」
おれ自身、ほとんど無意識に漏れた言葉にあかねが驚いたような声をあげた。
「べ、別に用があるんならいーけどよっ」
あわてて自分の言葉をとりつくろう。ここでケンカしちまうのはちょっともったいねぇ。
「そうじゃないの。ただびっくりしただけ」
「は?」
なんでびっくりするんだよ。
「明日は雨かしら」
「おまえなぁっ、何言って‥」
「ウソよ」
おれの言葉を途中であかねがさえぎった。
「うれしい。だってあんまり乱馬からってさそってくれないもんっ」
あかねはちょっと頬をふくらませながらおれの方を振り返った。
…だからっそんな顔して人のこと見るなってっ/////
相変わらず空は雲一つない快晴。
今のおれの心ん中みてーに
日曜もこんな空だったら、きっと
君の名前を呼んだその後に
いつもそばにいてくれてありがとうって言うから―
おまけ
「大変!もうこんな時間。授業始まっちゃう!!」
「いーじゃねーかよ。たまにはこのままサボっても…」
「だーめっ。留年してもしらないわよっ」
「へーへー」
「もう宿題見せたげないからね」
「えっちょっと待てよ、あかね!!」
「じゃあちゃんと授業出なさい」
「ちぇっ」
5時間目のチャイム1分前。
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*管理人コメント*
コメットさんから我が家の70000hit記念小説を戴きましたvv
2人らしい空気に何だか和んでしまいました(^^)
でもこの素敵な空が2人の関係をちょっと進めてくれたようですね♪
可愛い乱Xあに乾杯です!
コメットさん、素敵な小説ありがとうございましたvv
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