紅葉



気持ちの良い程の秋晴れ。
その空の下の長い列。

「先生も変な事、考えるわよねー。」
「別に嫌じゃないけど。」
「そう〜?私はわざわざこんな所まで来てしなくても良いと思うけどなぁ。」
「まぁ、まぁ、皆良いじゃない。学校の中にいるより気分転換になって。」
「そうかぁ?俺は教室で寝てたほうがよっぽどいいぞ。」
「それは、あんただけでしょう?普通は、起きてるもんなの!」
「けっ、なんでわざわざ『芸術の秋』だからなんて安直な理由で、公園行って、スケッチ大会しなくちゃいけねーんだ? 秋といえば、スポーツだろ!」
「文句言わないっ!あっ、見えてきたわね、亀山公園。」

朝の会の時に突然、校長先生が、スケッチ大会をしようと提案してきたの。
先生達は、その校長先生に逆らう事ができず、午後からの授業をすべて取りやめ学校の
近くにある亀山公園にやって来た・・・と言う訳。

入り口までやって来た所で、先生から指示があった。

「ここからは、各自、自由に行動していい事にする。集合時間は、今から2時間後の3時。
遅れるなよー。でわ、解散!」

「だって、乱馬。どーする?」
「えー・・・?ふぁぁぁぁぁっふ・・・・」

乱馬は大きなあくびをひとつ。

(この時間帯腹いっぱいだし、いっちばん眠くなる時間なんだよ。)

(うわっ、やる気なさそう・・・・)

「しゃきっとしなさい!しゃきっと!!」
「・・・じゃあ、昼寝して、残りの30分で描く。うん、我ながら完璧な計画だぜ!」
「もうっ、何が完璧なのよ、ちゃんと描かなきゃ!」
「だって、めんどくせーじゃん。」
「だめ!ほら、周り見てみなさいよ。みんな真面目に描いてるでしょ!早くしないと良い場所なくなっちゃう・・・・・」
「場所ねぇ・・・・おぉ!」
「なに?」
「俺達にしか行けないとっておきの場所があるぜ。」
「とっておき・・・どこよ?」
「あそこだよ。」

乱馬が指差す方向を目で追っていくとそこには大きな木。まさかね。
でも、乱馬の考える事だからねぇ、ありえなくは無いわ、うん。

「もしかしてさぁ・・・木の上って事?」

・・・あかねの奴、今、俺の事馬鹿にしてんな。顔にしっかりと書いてあるぜ。
じゃあ、おめーは良い考えあるのかってんだよ!

「なんだよその顔。いけねーのかよ?」
「・・・あんたってやっぱ普通じゃないわね〜。」
「別にいいぜ?俺、1人で行くから!」

俺は木に向かって歩き始めた。すると、あかねは慌てた様に俺の後をついてきた。

正直、本気で1人で行こうとは思ってないぜ?だけど・・・

「待ってよ!別に行かないとは言ってないじゃない!!」
「じゃあ、行くのか?」
「・・・だって、他にいい所無さそうだし。」

どうして、こんな事まで意地を張れるのだろうか。

「なら、素直に行きたいと言えよ!」
「べ、別に行きたいなんて言ってないもん!ただ、あんたがのろのろしてるから、場所が・・・・」
「はぁ、素直じゃねーな・・・・・」
「な、なによっ!」
「ほらっ、しゃねーから連れてってやるよ!」
「い、いいわよ別に連れてってくれなくても、自分で行けるから・・・」

お前が1人で登れるわけないだろーが・・・

「お手をどうぞ、お姫様?」
「はぁ!?な、何言ってんの・・・」
「ったく、ずべこべ言わず、つかまっとけよ!」
「ちょ、ちょっと、きゃっ!」

俺は、半ば強引にあかねを抱きかかえて軽くジャンプした。そして丈夫そうな木の枝に、
あかねをおろす。ふと視線をうつすと、鮮やかな赤色、黄色、茶色に色づいた街並みが目に映った。
あかねはというと、

「わぁ、ここならきっと素敵な絵が描けるわね!」
「・・・おう。」

この景色を見たとたん機嫌が直ったようだ。なんだったっけ・・・女心と秋の空・・・?秋の空の様に、変わりやすい女の心だったか?・・・・全くそのとうりだぜ。
この笑顔が見たかったんだ。いつもこんな顔してりゃあなぁ・・・・・
あっ、でもそれも困る!俺以外の奴に見せたくない・・・・し。何考えてんだよ、俺!
俺って独占欲強い・・・のか?

「乱馬、あんたも描くのよ?こーんなにきれいな景色なんだから。」
「じゃあ、どーせ描くならどっちが上手く描けるか競争しねーか?」
「もー、あんたは何でも勝負したがるのね。でも、いいわよ、絶対に負けないんだから!!」
「それは、こっちの台詞!お前、絵描けたっけなー?」
「失礼ね、描けるわよ!その言葉、後で絶対っ、後悔するわよ!」
「それはどうだか。」

こう言ったのはいいけど、何を描けばいいんだ?
しかし、本当に気持ちいいな此処・・・・・


「結構できたわね。ちょっと休憩っと。」

私の方はもう少しで完成だけど乱馬は描けたのかしら。そういえば、やけに静か・・・・

「乱馬ー?・・・やっぱりね。静か過ぎると思ったのよ。自分から勝負ふっかけ時ながら!・・・もぅ、なんでそんな無邪気な顔して眠ってるのよっ!」

乱馬は木に寄りかかって、すやすやと気持ちよさそうに眠っていた。
思わずその顔に手が伸びた。ぷにぷにとほっぺたをつつくと「う〜ん、むにゃ、むにゃ・・・」と抵抗してきた。

「可愛い!!なびきお姉ちゃんじゃないけど、カメラがないのが残念ね。
あっ、そうだ!丁度良い物があるじゃない。言っとくけど、寝てる方が悪いんだからねっ♪」


私が鉛筆を再び手にとってから30分・・・

「できたっ!我ながら上手いんじゃない?そっくり、そっくりvv」
「なにが?」
「わっ、わっ、わっ!?」

私が満足気に微笑んでいると横から寝ていた本人の声がした。
私はびっくりして、思わずスケッチブックを落としそうになったが持ちこたえて、平静を装った。

「い、いつから起きてたの・・・?」

いつの間に!この絵、見られてないわよね!?

「今・・・・ふぁっ、それにしても・・・・・俺いつの間に寝たんだぁ・・・?」

ほっ・・・よかった。まだ寝ぼけてるみたい。

「少なくとも、30分前には寝てたわよ・・・」
「なんで起こさなかったんだよ?」
「えっ!?それは、その、あんまり気持ちよさそうな顔して眠ってたから・・・・」
「そっか・・・本当にそれだけ?」
「そ、それだけよ!!」
「ふ〜ん、ま、いいか。それだけ時間があったってことはもう絵、描けたんだろ?」
「えっ、描けてないわよ!」
「・・・じゃあ、お前この時間何してたんだよ。やっぱ、お前何か隠してるだろ・・・見せろっ!」
「やだ!絶対にだめぇ!!///」

私はスケッチブックをぎゅっと取られないように抱きしめた・・・はずなのに、乱馬の力には
かなうはずもなく、いとも簡単にとられてしまった。

「あっ!返してっ!!!」
「やだよ〜♪」
「乱馬ぁ〜!!!」

こいつの焦り様。よっぽど上手く描けなかったんだな。
しょうがない、俺がたっぷり笑ってやるよ♪

乱馬は暴れるあかねを片手で取り押さえながら、勝ち誇った顔をしてスケッチブックの表紙をめくろうとしたが、タイミング悪く、強い風が吹いた。

ザアアアッ

「うわっ!」
「きゃっ!」

目もあけられないほどの強い風だったがしばらくすると風はおさまった。
そして、風で舞い上がった木の葉も静かに地面へと落ちていった。

「風強かったねー・・・・あっ、ダメだってば!!」
「へへーんだ♪」

ふっ、何を言ってもだめだぜ。一体どんな絵が!俺は思いっきりスケッチブックをひらいた。

「ああ!?もう、馬鹿ぁ!/////」
「・・・・・どこにも描いてないぞ?」
「・・・・え?ちょっと、かして!」

乱馬から奪い返したスケッチブックの全ページをぱらぱらとめくって見たが、あるはずの絵がそこにはなかった。

確かにここにはさんだわよねぇ。まさか、さっきの風で!?
乱馬に見られなかったのはいいけど、誰かに見られたら!!どうしよう、どこにいったの〜!
そんな時下から声がした。さゆり達だった。嫌な予感・・・・

「あれ、これな〜に・・・あ!」
「何?見せて!あらっ・・・」

「さゆり、ゆか。それ・・・・」
「あっ、あかねと乱馬くん。いないと思ったらそんな所にいたの!じゃあ、やっぱりこれはーv」

ゆかが手にしてるのは、2人の反応からしてもまぎれもない私の絵。
あの2人にあの絵を見られてしまうなんて・・・・やばいわね。

「ねー、あかねぇ?」

「あかね、どうした?あっ、もしかしてあれがお前の・・・」

う"っ!

「あーかーねっ♪」

うう"っ!

「・・・さゆり、ゆか・・・・後で何か奢るから・・・それ持って逃げてっ!!!」
「「ラジャ〜♪」」
「じゃーねー、乱馬くんv」
「おい、待てよ!!あの2人の怪しい反応いい、一体なに描いたんだよ、あかね!!」
「・・・気にしない、気にしない!さっ、時間も少なくなったから、ちゃんと絵描きましょっ!」
「気になるって!」
「・・・・・・」
「おい、無視かよ!おいこらっ、あかね!!」
「・・・・・・」
「あかね、怒るぞ!!!」
「・・・もう、怒ってんじゃない。じゃあ、ヒントあげるわよ。」
「ヒントぉ〜?」
「じゃあ、教えてあげない。」
「わ、分かったよ!で・・・?」
「あんたには絶対、描けないもの!はい、ヒント終わり。」
「はぁ〜?なんだよ、それー????」
「あっ、あとね、可愛いものよ。」
「・・・ますますわけわかんねーよ!」
「へへっ、分からなくていいのー・・・」
「教えろよー!」


見渡せば満面に紅葉。
見上げれば、優しい秋の空・・・






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*管理人コメント*
「Your smile is the best」の管理人mamiさんから相互記念に頂きましたvv
まず一言!!!!!
2人共可愛過ぎです///////
思わずツボにはまりました(>∀<)ノ
あかねちゃんの突拍子のない行動ってすごく可愛いくて大胆ですよねv
ほんと見ててお腹いっぱいになりました♪
mamiさん、小説ありがとうございましたvv