お願い
「げ〜・・・すげえ混んでんぞ・・・」
「そうだね・・・」
乱馬とあかねの二人は本日無事新年を迎え仲良く初詣へと足を運んでいた
お正月の・・・というものは信じられないぐらいの人出がある
その中を歩き進むのは相当体力を使うし気力も使う
なぜこうまでしてみな足を運ぶのだろうか?
その理由は至って単純である、普段仏なんてものを信じていない者達が
この日、新年最初のこの日だけは仏様に挨拶に来る、自らの欲望の為に・・・
彼氏(彼女)が欲しい・・・
結婚したい・・・
〜大学に入りたい・・・
就職が・・・
家族みんなが健康に・・・
日本人なら誰しも一度は新年にこんなお願いをしたことが必ずあるだろう
そんな中この二人も例外に漏れず仏の元へとやって来ていた
「ったく・・・」
(あかねのやつがどうしてもって言うから来たけど・・・)
悪態をついてはいるが乱馬は自分の腕にしがみつく振り袖姿のあかねをその人海から守っていた
「はあっ・・・はあっ・・・」
(凄い人・・・でも・・・乱馬・・・さっきからあたしの事庇ってくれてる・・・)
正月だとかそんな事はどうでもいい乱馬はいつもと同じ赤いチャイナ服を着ている
チャイナ服の乱馬と振り袖姿のあかね・・・妙な組み合わせではあるがよく似合っている
「ちょっと休憩するか?」
目的の社はまだまだ遠い・・・乱馬は疲労の色を見せ始めたあかねに申し出た
「うん・・そうする」
あかねは乱馬のその言葉に素直に従い少し休憩を取ることにした
だが人の波がそれを許さない、我も我もと仏を目指す人間の力は立ち止まった
二人を飲み込もうとする
「だあ〜っ!もう、うざってえっ!!」
乱馬もまたその熱気と圧力に我慢の限界だった・・・
そして何よりもあかねが心配だった為この場を抜け出す事にした乱馬は自慢の腕力であかねを抱え上げた
「ちょっ、ちょっと乱馬っ!?」
人混みの中で急に抱え上げられたあかねは驚きと恥ずかしさで乱馬の腕の中で暴れた
そんな二人を周りの人間は迷惑そうに見ている
「黙ってろ、舌噛むぞ!」
乱馬は暴れるあかねをぎゅっと抱きしめてから
ぶわっ
人混みの中から一気に飛び出した
その行動は周りの人々の注目を集めたが乱馬はそんなことおかまいなしにあかねを抱えたまま駆けだした
「もうっこんな所まで来ちゃってどうすんのよ!」
あの後暫く乱馬は暴れるあかねにお構いなしに走り続けた為
目的地からは大分遠のいてしまっていた
「ちぇ・・お前が辛そうだったから俺は恥ずかしいの我慢して助けてやったのに・・・」
乱馬は怒るあかねを横目で見ながらぼそぼそと呟いた
「はあ〜・・・」
(折角乱馬と初詣に来たのに・・・喧嘩するのもバカバカしいわね・・・乱馬も言い返して来ないし)
あかねは昨夜乱馬と初詣に行く約束をした後からずっと楽しみにしていたのだ
「そっ、それより・・・お前大丈夫なのかよ」
乱馬は深くため息をつくあかねを見てなにか自分が悪いことをしたような気分になった為かいつもより少し素直だった
「うん」
(あんたが走ってる間ずっと休んでたんだから・・・)
「そっか・・・少し歩くか?」
乱馬は初詣を台無しにしたお詫びでは無いがあかねに散歩を申し出た
なによりあかねと二人でもう少し一緒に肩を並べて歩きたかった
「そうね」
そう言うとあかねは乱馬の隣りへと歩み寄った
「なあ・・・あれなんだ?」
暫く歩くと乱馬は小さな小屋の様なものを見つけた
「さあ?」
あかねも目を凝らしてそれを見たが遠くてよく分からない
「ちっと行ってみっか?」
「うん」
二人がゆっくりとそれに近づいていくと
「「あっ」」
同時に驚きの声をあげた
遠目には小屋の様に見えたそれは人知れずひっそりと佇む社だった
「丁度いいじゃねえか、ここでお参りしようぜ」
乱馬のその言葉に
「そうね、ちょっと寂しいとこだけど・・・」
(まあ、・・・には変わらないしいいわよね)
「ラッキーだったな」
人混みを避け初詣を済ませた事で上機嫌の乱馬
「うん、ああいうとこって意外と徳があるのかも」
あかねもまたどんな形であれ乱馬と共に新年の挨拶を無事行えた事でホッとしていた
あの小さな小屋みたいな社でお参りを済ませた二人は天道家への帰り道を歩いていた
「ねえ、乱馬はなにをお願いしたの?」
「あ?そんなもん人に教えるもんじゃねえだろ?」
「そうだけど・・・聞きたいな」
「やだね、お前に言ったらぜって〜笑うかんな」
「なにっ!?笑ってあげるから教えてよっ!」
「何、バカな事言ってやがる!そう言うお前こそ何お願いしたんだよ?」
「えっ!?あっ・・・あたしは・・・」
「ん〜?言えない程恥ずかしい事お願いしたのか〜?」
「そんな訳ないじゃないっ!言えるわよっ!別に」
「ほ〜、じゃあ聞かせて貰おうかな?」
「いいわよっ、ほら耳貸しなさいっ」
あかねは乱馬に向かって手招きした
「ん?」
乱馬はあかねの口元に耳を寄せた
「・・・あたしのお願いはね・・・」
あかねはこそっと乱馬に耳打ちした
「んなっ////何言ってやがるっ!!」
あかねのお願いを聞いた乱馬は耳まで真っ赤にして怒鳴った
「さあっ!あたしのお願い言ったんだからあんたのも教えなさいよねっ」
「なっ、いつ俺がお前のお願い聞いたら俺のを言うって言ったんだよっ!!」
「いいじゃないっ、教えてくれたってっ!」
「ったく・・・しょうがねえな・・・」
(言い出したらきかねえかんな・・・こいつ・・・)
乱馬はゆっくりとあかねの耳元に顔を寄せて
「・・・・・・・・・・だよ」
「えっ!?なんて言ったの!?もう一回言ってっ!」
あかねはしっかりと聞いたのだがその言葉が信じられなかった為もう一回聞きたかった
「なっ///もう言えるかっ!!」
乱馬は顔を真っ赤にして逃げ出した
「あっ!こらっ!待ちなさい!乱馬〜!」
二人は顔を真っ赤にしながら新年をいつもと同じ鬼ごっこで過ごした
ただ昨日まで、去年までと違うのは二人がちょっとだけ素直になっていた事だ
今年こそあかねに素直になれますように・・・
今年は乱馬にもっと素直になれますように・・・
そんな二人の願いを仏が聞き入れたのかどうかは分からないが
この二人ならきっといつかその願いを叶えることが出来るだろう
同じ願いを持っているのだから
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*管理人コメント*
「LOVE GAME」の管理人ネドピエロさんから相互記念に頂きましたvv
リクエストさせてもらったんですけど、お題は「お正月」vv
一足早い形になってしまいましたが、このお話すっごく二人の姿が目に浮かぶようでとってもほほえましかったです^^
「素直」って簡単には言えるけど実行するのはとっても難しいことなんですよね、特にこの2人には(笑)
お願いもきっと神様に届くハズ♪
可愛らしい素敵な小説ありがとうございましたっ////(礼
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