欲望
人間ってやつは…いや、男ってやつはどんどん欲張りになってくんだな。
他人事のように俺はそんなことを思った。
最初は俺を意識してほしいって思って。
次は付き合いたいって。
そしてそれが叶うと触れたいと、全てを知りたいと思う。
こーゆー欲望は尽きないもんだ。
キリがない追いかけっこ。
触れたいって言ったら拒否されるかな。
そしたら、俺、かなりショックかも…。
俺の中でせめぎあってる2つの想い。
綺麗なココロと欲望のココロ。
どっちも本当の俺のココロ。
だって、心だけで全てが伝わるなら体なんていらないだろ?
見つめ合うだけじゃ限界があるから、言葉があるんだろ?
俺はあかねが好きで、あかねも俺のことを好きだと思ってくれてるのなら。
触れたい…。
「なぁ、あかねー」
「ん?なによ」
俺はそろそろとあかねの傍に近づく。
緊張を悟られないよう、平静を装って。
肩を抱こうとする手が震える。
指の先まで心臓になったみたいだ。
あと5cm…。あと3cm…。
あと1cm……。
ダメだ!できねぇ…。
俺ってなんてナイーブなんだ。
くっそー。あとチョット、あとチョットなのに。
勇気が足りない。
一歩踏み出す勇気が。
「ねえ、さっきから何1人でやってるのよ?」
「え゛!?」
「何か落ち着きない感じねー。」
「うるせーよ」
こいつは俺と一緒にいて何とも思わないのか?
女の子って、やっぱ自分からは恥ずかしくてできないものなのか?
ただでさえ、鈍くて不器用なこいつ。
俺のこんな隠れた努力を見抜けるわけないか…。
俺は大きなため息をひとつ吐いた。
ま、慌てる必要ないしな。
そんなところも、か、可愛いし…。
「変な乱馬」
ふわっ…。
え…?
肩にかかる重み。
あかねは何のためらいもなく俺に身を寄せてきた。
こ、こいつ俺が長い時間あれこれ考えてたことを、あっさり実行しやがった!
実はすごいやつだったのか!?
「どうしたの?」
「なんでもねーよ」
あかねから触れてきてくれたせいもあって、俺もごく簡単に肩に手を回した。
さっきまであんなに悩んでたのが嘘みたいだ。
俺、バカみたいじゃねーか。
「あかね…」
「ん?」
「俺、お前に触れてもいいか?」
あかねは軽く笑うと俺の手を握ってそのまま目を閉じた。
「バカね」
「な、バカとはなんだよ!俺がどれだけ真剣に考えてたと思ってんだ」
「何をそんなに悩む必要があるのよ」
さっきまで握ってた手を、あかねは自分の頬に押し当てた
「私に触れていいのは…、ううん。私が触れてほしいのは乱馬だけよ」
真っ赤になりながら笑うあかね。
くそー、可愛い!可愛いすぎる!!
俺は考えるより早く、もう片方の手を添えてあかねの体を抱きしめていた。
こいつ、こんなに小さかったんだな。
俺の腕の中に納まっちまうくらい。
守ってやらなきゃ。
俺がこいつをずっとずっと。
指をそのままあかねの顎にかけて、震える唇であかねの唇を軽く塞いだ。
初めて触れたところは、俺の想像以上に温かくて柔らかかった。
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*管理人コメント*
「花筐」管理人宮沢凛音さんからお返しの小説として戴きましたv
「欲望」というタイトルとなっていますが、私としては何とも純粋な乱馬が映ってるようにしか見えないんです^^;
「好き」って分かった時、もしかして相手も自分のこと・・・と思った時、その相手に触れてみたくなるのはごく自然なこと
でも、それを受け止めるのは容易いことではなく、自分と葛藤する・・
きっとこれは乱馬君だけではなく、一般の方でもあるんじゃないでしょうか?
凛音さんらしい甘さも取り入れつつ、何気ない2人の日常を捉えたこの作品v
とっても気に入ってしまいました(^^)
素敵な小説、ありがとうございました♪
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